USJに行ってきた。ユニバーサルスタジオジャパンである。一応、わたしも映画鑑賞を趣味にしている者。生まれ育った大阪にこんなものができてしまった以上、行かないわけにはいかない。
開場の30分ほど前に着いて待っている。まわりは浮き足立った若人の群れである。我々も負けずに浮き足立ってみるが、開場して走り出す人々の前に早々にして敗北し、ベティちゃんの後ろ姿を眺めながらゆっくりと歩いて入場。今回作戦担当は我がヨメサン。職場からインターネットを使ってアトラクション情報を入手、雑多な情報から重要な部分だけを抜粋しExcelでコンパクトな表を作成して持参するという芸を見せる。大学院で論文作成のために身に付けた技術はムダではなかったのだ。で、作戦担当の命により、まずE.T.の整理券を手に入れに行く。USJではそれぞれのアトラクションで整理券を配っており、これをもらってしまえば並ぶ必要がなくなるのだ。とはいえ、整理券は同時に二枚持つことはできないので、待ち時間の長いものの整理券をもらうのが効果的。どのアトラクションが待ち時間が長いかは作戦担当が調べ上げているという寸法だ。で、首尾よく整理券ゲットに成功し、早速最初のアトラクションへと向かう。
いやー、のっけから面白かった。周囲の人々はポンチョをかぶっていたが、ここはずぶ濡れになるのが正道である。すっかりUSJに引き込まれている三人であった。ゲートを見つけて、これが入り口だったのかあ、などと言いながら歩いていると、、
遠くからドゥービーブラザースが流れてくる。ビキニでローラースケートのお姉ちゃんこそいないものの、ここは西海岸である。ふと見るとアミティ村の看板に誰かがいたずら書きをしている。ブロディ署長に報告しておかなければ。いや、署長はサメに食われたのだったか、それとも、あれは復讐編の設定の中だけのことか、ああ、ややこしい。ともかくまた船着き場についた。浮ついた女船長が私を遊覧に誘う。ああっ!しかし、やっぱりサメがっ!しょ、署長っ!!巨大なサメが水中を進む姿を実際にこの目で見ると、映画の中のシーンがまざまざと思い起こされ、それが目の前で現実(じゃないけど)にフィードバックして、大きなエモーションが引き起こされる。こんなふうに、自分が物語の主人公であると錯覚させてしまう力はディズニーランドの比ではない。その効果を最大にするためには、USJに来る前に予習をしておくべきだろうなあ、と思いながら、次のアトラクションにいや増す期待の一行である。
いやー、この作品を愛している人が見たら泣くよ、きっと。
映画を見ていないので、設定とかイマイチよくわからなかった。だって、ケビンコスナーの濡れた頭以外に見るべきところはないって評判の映画なんて見れないでしょ。しかしショーを見終わった森ペさん曰く「実は、映画のウォーターワールドって面白いのかなって思った」。御意。端の方の席でしか見れなかったので、今度はよい席で見てみたい。
ライブアクションとフィルムを融合させたショー。フィルムにはシュワちゃんも、リンダ・ハミルトンも、老けたエドワード・ファーロングも出ていて否が応にも盛り上がる。これまでいろんなアトラクションで臨場感を高める仕掛けを見てきたが、今回ほど効果的なものはなかった。逆に言うと、いくら仕掛けを施しても、フィルムの質がよくなければ効果は得られないということだ。テーマパーク関係者はこのへんの機微をよく学ぶように。
ハリウッドばんざーい。アメリカばんざーい。ゴッド、ブレース、アメーリカー。いいんだ。ここは大阪じゃないんだから、一時的にこんなことを思ったって、いいんだ。次はスタジオ22。超大作映画で実際に使ったセットを展示。盛り上がった気持ちで突入したら、フリントストーン2だった。スティーブンボールドウィンも超大作映画に出演なんだから出世したもんだ。少し盛り下がって街を歩いているとパトカーから全身黒づくめでサングラスをかけた太っちょとノッポが現れる。しまったと思う間もなくローハイドを歌いはじめる二人。ノリノリの道行く人。ついつい踊ってしまった。さて、次のアトラクション。ここまでほとんど待ち時間なく進んできたのに、ついに40分待ちとの表示に遭遇。これくらいの待ち時間はなんともないぜ、と中に入ろうとしたら作戦担当が「ここは夕方になったら空いてくるって話よ。なんで、混んでるときにわざわざ並ばなきゃ行けないのよ」と私に警告を発してくる。しかし、実際並んでみるとそんなに待たなかったので作戦担当の機嫌も少し直る。
USJは炎のアトラクションが非常に多いのだが、これはその白眉。炎があがって高熱を実際に浴びる。USJでは水を使ったアトラクションが多く、濡れ鼠の観客が何人もバックドラフトにやって来て服を乾かしていた(ウソ)。館内が高熱なので、外に出ると涼しく感じる。
ビールを飲んで一服して、アニマルショーを見に行く。ハリウッドでは「泣く子と動物には勝てない」言われているように(←何かと混同している)、訓練された動物は映画制作で欠かせないものだ。ここでは(他のショーでもだが)、観客を引き込むためにショーの協力者を募る。で、ついうっかり「協力してくれる人、手を上げて下さい」ってセリフに乗っちゃって、オウムに玩ばれてしまった。とっても得した気持ちになった。
並の体感シアターではなかった。グルングルン振り回される。食事の直後には行かないほうがよかろう。しかし、最高である。USJのアトラクションの中で、最も遊園地的快感を味わえる。それにしても最後の最後に入ったこれが一番待ち時間が長いとは予想外だった。このアトラクションは夕方になると嘘のように人がいなくなるというので有名だったが、最近はそのことが浸透してみんなが夕方に行くようになってしまっているのかもしれない。
しかし、振り返ってみると非常に楽しかった。大したことはないという前評判もあるにはあったが、やっぱり私は映画ファン。好きな映画の音楽がどこからともなく流れてくるだけで単純にワクワクしてしまう(トイレに入ったらヘンリーマンシーニのシャレードが流れている。渋いよ)。そんな私にとって、実家から片道390円、50分ほどでこんな場所に来ることができるのは、まさに夢。書き割りの摩天楼の向こうに阪神高速が見えてたって構わないのさ。
そうして映画ファンとしてのアイデンティティをますます強固にして帰ってきたのだった。また機会があったら行くぞう。