あっめーりかー、あっめーりかー

USJに行ってきた。ユニバーサルスタジオジャパンである。一応、わたしも映画鑑賞を趣味にしている者。生まれ育った大阪にこんなものができてしまった以上、行かないわけにはいかない。

我々は如何にしてUSJに備えたか

というわけで、有給取って長崎から飛んできた。同行してくれる人たちは、ヨメサンと森ペさん。森ペさんの就職祝いという名目をつけたのである(森さんと我々、あと今回は欠席の山脇さんは以前水曜映画クラブという会を結成しており、毎週水曜日のレディースデイに大津のシネコンで映画を見る習わしであった。そのメンバーたる森ペさんの祝い事としてユニバーサルスタジオほどふさわしいものはあるまい)。阪急、環状線、桜島線と乗り継いでピカピカのユニバーサルシティ駅に。のっけからジゴロ・ジョーが現れそうな街並みを数百メートル歩くと、ゲートがある。既にして異国である。たこ焼きソースの香り漂う大阪であろうはずもない。ましてや工場の建ち並ぶ此花区とは一体何のことか。

開場の30分ほど前に着いて待っている。まわりは浮き足立った若人の群れである。我々も負けずに浮き足立ってみるが、開場して走り出す人々の前に早々にして敗北し、ベティちゃんの後ろ姿を眺めながらゆっくりと歩いて入場。今回作戦担当は我がヨメサン。職場からインターネットを使ってアトラクション情報を入手、雑多な情報から重要な部分だけを抜粋しExcelでコンパクトな表を作成して持参するという芸を見せる。大学院で論文作成のために身に付けた技術はムダではなかったのだ。で、作戦担当の命により、まずE.T.の整理券を手に入れに行く。USJではそれぞれのアトラクションで整理券を配っており、これをもらってしまえば並ぶ必要がなくなるのだ。とはいえ、整理券は同時に二枚持つことはできないので、待ち時間の長いものの整理券をもらうのが効果的。どのアトラクションが待ち時間が長いかは作戦担当が調べ上げているという寸法だ。で、首尾よく整理券ゲットに成功し、早速最初のアトラクションへと向かう。

ジュラシックパーク・ザ・ライド

ここは熱帯のジャングルである。もう既に15分ほどあっちこっちへと歩いている。見上げるとハモンド社長が何か喋っているが、よく聞こえない。やっと船着き場に着いた。これからボートに乗り込み、甦った中生代の世界を探訪するのである。ゲートが開くと、おおっ!!ウルトラサウルスが草を食んでいるっ!!大変に巨大である。グラント博士もこれを見たときはさぞや感動したことであろうと思いつつ、警報がっ!マルコム博士は正しかったのだッ!!と思った次の瞬間、船には最大の危機が!

いやー、のっけから面白かった。周囲の人々はポンチョをかぶっていたが、ここはずぶ濡れになるのが正道である。すっかりUSJに引き込まれている三人であった。ゲートを見つけて、これが入り口だったのかあ、などと言いながら歩いていると、、

ジョーズ

遠くからドゥービーブラザースが流れてくる。ビキニでローラースケートのお姉ちゃんこそいないものの、ここは西海岸である。ふと見るとアミティ村の看板に誰かがいたずら書きをしている。ブロディ署長に報告しておかなければ。いや、署長はサメに食われたのだったか、それとも、あれは復讐編の設定の中だけのことか、ああ、ややこしい。ともかくまた船着き場についた。浮ついた女船長が私を遊覧に誘う。ああっ!しかし、やっぱりサメがっ!しょ、署長っ!!

巨大なサメが水中を進む姿を実際にこの目で見ると、映画の中のシーンがまざまざと思い起こされ、それが目の前で現実(じゃないけど)にフィードバックして、大きなエモーションが引き起こされる。こんなふうに、自分が物語の主人公であると錯覚させてしまう力はディズニーランドの比ではない。その効果を最大にするためには、USJに来る前に予習をしておくべきだろうなあ、と思いながら、次のアトラクションにいや増す期待の一行である。

E.T.

針葉樹の森を歩いていると、巨大E.T.が。「我々の星は死に瀕している。E.T.の奇跡を起こす能力が必要だ。E.T.を地球から連れて帰って欲しい」って、あんたもE.T.やんか。どうも知らなかったが、E.T.は固有名詞らしい。で、FBIの追跡を振りきり、アンブリンの月を眺め、ワープした先に見たものは!

いやー、この作品を愛している人が見たら泣くよ、きっと。

インターミッション

(ミッションインポッシブルではない)
さて、次の整理券を取りに行く、ターミネーター2である。実際にアトラクションに入れるのは二時間半後なので、それまで他のものを見ることにする。作戦担当もここから先は何の計画もない様子。そこで、目の前にあったモンスターメーキャップショーというのに入る。ハリウッドの特殊メーキャップを解説するショーという触れ込みだったが、引田天功だった。とはいえショーはゆっくり座って見ていられるので楽である。外に出て、50'sのハンバーガーショップに入る。ヨメサンは「ここでウマサーマンがトラボルタと踊るのよね」とか言っているが、パロディ経験が実物に触れるより先行してしまう世代の悲しさである(あっしだって人のことは言えないが、「アメリカングラフティ」を思い出せるというのはまだ幸せと言えよう)。ハンバーガーはこのデフレ時代からすると一桁間違ってるんじゃないかという値付けがされているが、某アメリカの国民食ハンバーガーより遥かにおいしかったから文句は言わないことにする。で、次のアトラクションに行く途中で、クールな大道芸人キシタカに出会う。ちょっと面白い。ところで、帰りの電車でもキシタカに出会う。芸人も電車で通うUSJ、ここは大阪庶民の街かな(字余り)

ウォーターワールド

南極と北極の氷が溶け、舞台は水没した。その世界でショーマン達は水上基地を造り、日々生きるために闘っていた。しかし、海賊は虎視眈々とドライランドを狙っている。我々は悪を倒すために力を合わせてブーイングをするのだ!

映画を見ていないので、設定とかイマイチよくわからなかった。だって、ケビンコスナーの濡れた頭以外に見るべきところはないって評判の映画なんて見れないでしょ。しかしショーを見終わった森ペさん曰く「実は、映画のウォーターワールドって面白いのかなって思った」。御意。端の方の席でしか見れなかったので、今度はよい席で見てみたい。

ターミネーター2:3D

悪を倒した我々は、平和を維持するためにサイバーダイン社の新兵器発表会に赴いた。出迎えはスタイルのいい上沼恵美子、、、いや、ここは大阪ではなかった、、綾小路レイカさんだ。彼女の見せてくれたビデオによると、サイバーダイン社は素晴らしい会社だ。この会社に任せておけば未来はバラ色の、、ん?何かおかしい。あっ、あれはジョンとサラコナー母子だっ?!

ライブアクションとフィルムを融合させたショー。フィルムにはシュワちゃんも、リンダ・ハミルトンも、老けたエドワード・ファーロングも出ていて否が応にも盛り上がる。これまでいろんなアトラクションで臨場感を高める仕掛けを見てきたが、今回ほど効果的なものはなかった。逆に言うと、いくら仕掛けを施しても、フィルムの質がよくなければ効果は得られないということだ。テーマパーク関係者はこのへんの機微をよく学ぶように。

インターミッション2

(ミッション・トゥー・マーズ2という映画は決してできないだろう)
この時点で整理券の発行はすべてのアトラクションで終了しており、大型アトラクションもあと二つだけなので、ここらで小規模なものに行くことにする。まずはハリウッドムービーマジック。スピルバーグが映画の魔法について解説してくれるというが、実体は名場面集。これが、映画ファンなら見ているだけで大盛り上がり。ハリウッド映画を長年見続けてきた私は本当に幸せ者だと思わせられる。批判精神なんてあったもんじゃない。ハリウッドばんざーい。アメリカばんざーい。ゴッド、ブレース、アメーリカー。いいんだ。ここは大阪じゃないんだから、一時的にこんなことを思ったって、いいんだ。次はスタジオ22。超大作映画で実際に使ったセットを展示。盛り上がった気持ちで突入したら、フリントストーン2だった。スティーブンボールドウィンも超大作映画に出演なんだから出世したもんだ。少し盛り下がって街を歩いているとパトカーから全身黒づくめでサングラスをかけた太っちょとノッポが現れる。しまったと思う間もなくローハイドを歌いはじめる二人。ノリノリの道行く人。ついつい踊ってしまった。さて、次のアトラクション。ここまでほとんど待ち時間なく進んできたのに、ついに40分待ちとの表示に遭遇。これくらいの待ち時間はなんともないぜ、と中に入ろうとしたら作戦担当が「ここは夕方になったら空いてくるって話よ。なんで、混んでるときにわざわざ並ばなきゃ行けないのよ」と私に警告を発してくる。しかし、実際並んでみるとそんなに待たなかったので作戦担当の機嫌も少し直る。

バックドラフト

消防士は古来ヒーローであった。現在でも、今この瞬間でもヒーローである。ここでは、その消防士を主役にした映画「バックドラフト」の舞台裏をのぞかせてくれる。リハーサルから本番へ進むのだ。カメラー、アクション!

USJは炎のアトラクションが非常に多いのだが、これはその白眉。炎があがって高熱を実際に浴びる。USJでは水を使ったアトラクションが多く、濡れ鼠の観客が何人もバックドラフトにやって来て服を乾かしていた(ウソ)。館内が高熱なので、外に出ると涼しく感じる。

ビールを飲んで一服して、アニマルショーを見に行く。ハリウッドでは「泣く子と動物には勝てない」言われているように(←何かと混同している)、訓練された動物は映画制作で欠かせないものだ。ここでは(他のショーでもだが)、観客を引き込むためにショーの協力者を募る。で、ついうっかり「協力してくれる人、手を上げて下さい」ってセリフに乗っちゃって、オウムに玩ばれてしまった。とっても得した気持ちになった。

バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド

夕暮れになってきて、楽しかった夢のような一日も終わりかけている。今日がずっと続けばいいのに。タイムマシンで、もう一回朝に戻って、、、デロリアンだ!というわけで、トヨタの作るデロリアン2に乗り込むことにした。ところが、そこにはビフが先回りしていた!タイムパラドックスを防がなきゃ!! 

並の体感シアターではなかった。グルングルン振り回される。食事の直後には行かないほうがよかろう。しかし、最高である。USJのアトラクションの中で、最も遊園地的快感を味わえる。それにしても最後の最後に入ったこれが一番待ち時間が長いとは予想外だった。このアトラクションは夕方になると嘘のように人がいなくなるというので有名だったが、最近はそのことが浸透してみんなが夕方に行くようになってしまっているのかもしれない。

Ever Lasting Dream

宇宙の危機は救ったものの当初の目的は果たせず、外は既に夜。あと10分ほどで閉場である。こういう場所から帰るときというのは、いつも少し物悲しくなるのはなぜだろうなぜかしら。一日で主要なアトラクションを全て見て回れたわけだから、大勝利なわけだが。一方、USJ側にしてみたら今後如何にしてリピーターを確保するかが重要な課題であろう。僕自身は、今回見れなかった小型のアトラクションのためにもう一回くらいなら訪れてもよいが、みんながみんなそうではあるまい。アトラクションの数をあと50%ほど増やすことと、ストリートライブや大道芸を増やすと同時にアトラクションは見れないけど敷地内には入れるという券を売り出すことが、USJを大阪の街に定着させるために必須なんじゃなかろうか。あと、夕日がきれいに見えるタワーとかあったら、もっといい。観覧車は天保山にあるからいらない。

しかし、振り返ってみると非常に楽しかった。大したことはないという前評判もあるにはあったが、やっぱり私は映画ファン。好きな映画の音楽がどこからともなく流れてくるだけで単純にワクワクしてしまう(トイレに入ったらヘンリーマンシーニのシャレードが流れている。渋いよ)。そんな私にとって、実家から片道390円、50分ほどでこんな場所に来ることができるのは、まさに夢。書き割りの摩天楼の向こうに阪神高速が見えてたって構わないのさ。

そうして映画ファンとしてのアイデンティティをますます強固にして帰ってきたのだった。また機会があったら行くぞう。

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