海の上のピアニスト
この映画は
アメリカという生き方
についての映画です。ノスタルジックなムードと友情のオブラートに包まれてはいますが、そこに存在するものは、文明批判であります。無限の人生を否定し、有限の鍵盤の組み合わせにこそ人生があるのだ、というティムロス扮するピアニストの言葉はヨーロッパ発の映画だからこそのものでしょう。
20世紀はアメリカの時代でした。1900(ナインティーンハンドレッド)の名を持つピアニストがこの映画の主人公であるのは、この映画が20世紀についての映画だからでしょう。20世紀はまた、科学の時代でもありました。終わりのない無限性について異議を差し挟むことは、科学の世界でもやはり異端扱いされるものです。なんといっても、科学では「常に新しく」あることを要請されます。その前提は、世界の無限性です。でなければ、いつかは新しいものがなくなってしまうわけですから。
そんなわけで、この映画のテーマには共感するところ大なのですが、見ている間は僕は常に冷静なままでした。泣けと言わんばかりの音楽、間の悪いギャグ、大仰な演出を繰り出されると、白けてしまってどうも。それに、このお話の幕の引き方には、僕は不満です。せっかく正しいことを言っていても、あの終わり方では負けではないですか。人を泣かせるためだったとしたら、テーマに対して不誠実なのではないでしょうか。
御裁断は(最高☆5つ)
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