アメリカン・ビューティー
いやあ、つらい映画だった。もうちょっと、お前らなんとかしろよっていう。もう少しコミュニケーションをうまく取れれば、事態は好転するだろうに。どうして自分から物事を悪化の方向へ持っていくかなあ。特に何がひどいかって、アネットベニングですな。あんな嫁さんがいたら、そりゃあ生きた屍にもなろうというものです。ああ、おそろしい。
この映画はアメリカの普通の家庭にある問題を描いたものだと思っていたのですが、僕が見るところ、ケビンスペイシーは実はヒーローであって、普通の男よりはずっと素晴らしいキャラクターでした。彼は結局のところ、いろんな問題を、特に娘の友人の抱えていた問題を偶然とは言え、見事に解決しました。彼女にご飯を食べさせているシーンで、彼女を見るまなざしにあふれる慈愛は、人が生きていくうえで自由であることが如何に重要であるかを雄弁に物語っているように思います。
この映画には三人の大人と、三人の若者が出てきていて、それぞれ何かに囚われています。ケビンスペイシーは家庭に、妻のアネットベニングは社会の消費傾向に、彼らの娘は父親に、その友人は自分自身に、娘のボーイフレンドはやはり父親に、その父親は職業にとらわれています。そしてケビンスペイシーが最初に囚われの身から逃れ、連鎖的に若者三人が自由の身になりました。残った二人は、映画が終わるまで自由にはなれなかった。自由になれないと、あげくは人に害をなしてしまう。哀れなものです。
マグノリアがアカデミー賞を取りそこね、この作品が勝ったというのは、理解が出来るのですが、かといって去年と比べると、そんなに素晴らしいかなあ?というのが正直なところです。ハリウッドの世界だとこういうのが新鮮なのかもしれませんけれど。
御裁断は(最高☆5つ)
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