アナザヘブン
脳を乗っ取る「何か」が起こす連続猟奇殺人事件、犯人は異常な怪力の持ち主で、体を殺しても「何か」は他の体に乗り移ることで生き続ける、、って、これは寄生獣かはたまたヒドゥンかという。どっちの作品も傑作だし、どうもあたしゃこの設定が好きみたいなんですね。てなわけで、ついつい今作も見てしまったという。擬態にまんまとひっかかりましたぜ。
今作で人間を乗っ取る「何か」は悪意の象徴です。それは、人間性そのもので(実際、映画の中でも人間であると自称しているわけですが)、そういう意味では寄生獣やヒドゥンと比べて、内省的というか罪の意識が全体の基調となるべきトーンのはずです。しかぁし、原田芳雄。お前は、なんや、そのキャラクター作りは。脚本の意図が全然わかってないんじゃないの?で、監督も制御できなかったんでしょう。雰囲気ぶち壊しですわ。何十年前ならいざしらず、こんな能天気オヤジは高度成長とともに滅んでしまったはず。ちぐはぐでしたな。
他にも、今作にはオカルトの要素あり、SFあり、恋愛映画(少しシュリの趣を感じました)あり、スプラッターありで、しかも刑事物なのですが、そういう雑多な要素もいまいちかみ合っていなかったですね。それから、人の悪意が主要テーマのクセに、普通の人の持っている様々な悪意についてはほとんど描かれていませんから、「何か」が演説をぶってもピンと来ないんですね。この映画はいきなり本筋から入っていますが、その前にイントロダクションで普通の人が悪意の犯罪を犯して、主役の二人がそれを解決するとかいうシークエンスを入れておけばよかったように思いますね。そういうところがあれば、この評でももう少しテーマについて突っ込んだことを書こうって気にもなるんですが。今のままではちょっと。
映画と同じ世界観の中で同時進行的にテレビドラマが作られていて、私も夲上まなみ目当てでテレビを見ています。かぶっているキャラがいたりするのですが、映画に関してはそれは失敗です。フォーカスがそれてしまう。二時間しかない枠で夾雑物を入れると、ただでさえ散漫なのが、もっともっと散漫になってしまう。テレビに映画のキャラが入るのはいいんですけどね。どうせテレビはもともと散漫だから。
御裁断は(最高☆5つ)
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