eXistenZ / eXistenZ
前もどこかで書いたような気がするが、映画というのは仮想のリアリズムに裏打ちされたメディアであって、そんな映画で現実の虚構性をテーマにするというのは矛盾した行為なのです。虚構の現実性をテーマにするのならいいのですがねえ。
しかも、最初からかなりあからさまにネタを割っているので、ゲームの世界とその上の階層世界とを行ったり来たりする物語の部分は平板の極みになります。何が起こっても、しょせんゲームの世界ですからねえ。まあ、楽しめる点があるとすれば、クローネンバーグ風ヌタヌタグチョグチョの美術なのですが、こればっかりはかなり趣味性の強い人でないとダメでしょうからねえ。背中についた接続プラグ(放射状にしわのよった穴になっている)に舌を入れたり、唾液で湿らせた指を突っ込んだり、ローションつけたりと、これもあまりにあからさまなので、笑ってしまいます。クローネンバーグって永遠のマンネリなんでしょうか?ちょっと飽きてきた気がします。
少し見方を変えて、この映画を仮想現実のおそろしさを描いたものだとしたら、確かにそういう映画はまだそれほどありふれたものではないんだけど。最近巷にあふれる、簡単に人を殺す若者の発生原因を追及した映画なんだったら、それはそれで納得も出来たのになあ。やっぱりクローネンバーグだからなあ、そんなテーマじゃないことは一目瞭然だなあ。
役者陣は豪華ですね。すっかりおばさんになったジェニファージェイソンリーに、これが噂のジュードロウか。と、そういえば昔キリスト役をやったことのあるウィレムデフォーと今回もなんかいかれた感じのイアンホルム。特にジュードロウはなかなかの演技でした。
ところで、この映画を見て気がついたんだけど、最近の仮想現実流行りって、ひょっとして西洋世界の願望なのか?もし、この現実がバーチャルなら、そのこと自体が世界の作り手の存在を示していることになるのだものな。それって神様じゃないか。やはり人間にとって神様は必要なのか?
御裁断は(最高☆5つ)
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