インビジブル
ポールバーホーベンってゲスで毒々なスター監督という、ハリウッドでは希有なニッチを占めている人だと思いますが、ゲスな部分と毒の部分はときどきバランスを逸してしまって、ゲスだけの作品を作ってしまうこともあります。最初からこういう人なんだから、と思って見ていれば「しまった、今回は外れか」で済むのですが、知らずにこの作品を見てしまったら、ちょっとつらいかもしれませんね。
最近は悪役しかしなくなったケビンベーコンが、「ワイルドシングズ」に続いて見せてはいけないものをぽろぽろ見せながら(CGの部分はともかく、透明人間なんだから見せなくてもよさそうなものなのに、ちゃんと実物を見せるんだからなあ。先端だけだけど)暴れ回ります。しかし、アパートの窓から外を覗いて若くてきれいな女性が着替えるところが目に入ったら、そりゃ、見てしまいますわな。そんなことが何回も起これば、そりゃ、期待もしますわな。それだけで、ケビンベーコンを悪者扱いすることは出来ません。それによく考えたらケビンベーコンが大暴れするのも、自分の研究プロジェクトを潰させないようにするという目的があるからですよね。少々強引な手口を使ってでも(法を犯しても)自分のプロジェクトを守るというのは、現実の科学研究の場面では、よくあることだと聞きます(と伝聞調でごまかしてみる)。まあ、この映画ではベーコン君やり過ぎちゃうわけですが、それも透明化の影響で理性が少し吹っ飛んでいるせいもあるのだから、見えなくなったために倫理観がなくなって悪いことをし放題っていうのとは、ちょっと違います。というわけで、この映画にはあまり毒がないのです。
見えなくなると倫理観がなくなるというのは、当たり前といえば当たり前でして、僕だったらあんなことやこんなことやそんなこともしたいなあと色々考えますね。でも、すぐ飽きちゃうような気がします。透明人間の憂鬱みたいなテーマで映画作れませんかね。
関係ないですけど、敵が見えないというのは怖いですね。この手の映画では見えないところから襲われるというショッキング手法はよく使われていて、効果的だと思うんですけど、そのためにはいろいろ工夫が必要ですよね。エイリアンとか。でも、透明人間なら、そのための工夫は全く要らないんだものなあ。あらためて、その効果を体感しました。
逆に言うと、透明人間と闘う側は、なんとかして透明人間を可視化する工夫をこらすべきだったですね。そこが戦いの焦点としてもっと明確であれば良かったのにと思います。せっかく熱探知スコープを持っているんだから、いつでもつけとけよ、とか思いました。
御裁断は(最高☆5つ)
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