ケイゾク /映画 Beautiful Dreamer
この映画のプロデューサーの植田博樹は実は知り合いでして、雪だるまプロという 8mmで自主映画を制作する京大のサークルで同じ頃に活動していました。何を隠そう、この私は彼が初めて作った自主映画で、形式上の主役をはっていたという間柄です。雪だるまプロのメンバーは卒業後テレビ界に進出するものが多く、彼はTBSで貴島誠一郎の系譜に入り、テレビドラマを制作し、その一本をついに映画にするまでになったという。一番の出世頭といったところでしょうか。で、まあ、僕も昔のよしみなので、一応見ておこうかと思ったわけです。あと、暇つぶしもしなくちゃいけなかったし。
僕の理解では、彼は学生の頃は映画というメディアをまったく理解していなかったのですが、やはり三つ子の魂は百までも。この作品も僕が見るところでは、映画というよりも芸術家気取りの若造がノリで作った一発芸映像の羅列という感じでした。僕はテレビの時はほとんど見ていなかったので、それでストーリーや人物関係がわからないのかと思っていましたが、僕の後ろに座っていた人達(映画が始まる前の会話を聞くと、テレビをちゃんと見ていたようです)も上映が終わってから、??という会話をしていたので、やはり作劇上で何らかの問題があるのでしょう。最大の問題は、無人島での殺人事件とそのなぞ解き(僕はそして誰もいなくなったを連想しました)と、朝倉(字、あってますかね?)というテレビシリーズでの敵との戦いと両方をぶちこんでしまったことでしょう。前半と後半で全然雰囲気の違う映画はフロムダスクティルドーンなどありますけど、これまでに成功したものなんてほとんどないですよ。しかも、今作はプロット上でも全く関係がない。ひどいもんだ。いいのか?これで?
いや、いかん。テレビ界の安易な作りを映画の世界に持ち込んで欲しくないものだと思う。せめて映画という世界とその観客に対する敬意というか愛情というか、そういうものに裏打ちされた作品を作って欲しいと思うよ。その点で「踊る大捜査線」はしっかりしていたと思う。テレビはただの埋め草だから、作り手の安易な姿勢を見せられてもあんまり腹も立たないが、僕は映画館に行くときは求めているものが違うんだなあ。みんなもそうじゃないんですかね?テレビでやってたからという理由だけで映画館に足を運んじゃだめだよ。こういうことを続けていると、せっかく復活の兆しが見えてきている日本映画界がまたおかしくなっちゃうよ。
映像処理とか役者の演技とかあざとさが目に付いて、適当に変なことをしておけばアホな観客が喜ぶぞという感覚。これって知的に退行した若者にありがちな、例えば宴会の時にズボンを脱いで笑いをとろうとするセンスに似ている感じがする。そういえばしばらく前に乱交パーティーに参加して下半身をさらした写真を撮られていたのもTBSの社員じゃなかったか?
御裁断は(最高☆5つ)