マイ・ドッグ・スキップ
内気で本を読むことと隣のお兄さんだけが友達な優しい子供が、感情的になると暴力を振るい自分のためなら威嚇を用いても他人を思い通りにしようとする粗野な青年になるという、そしてそれを成長だと言い張るという、そういうお話。アメリカ的な、あまりにアメリカ的な。
というのは、あまりにも悪意に満ちているが、どこにでもあるような子供とイヌの触れ合いを大仰な音楽と御都合主義のストーリー展開で盛り上げ、安っぽい感動に持ち込もうとされると、こんなひねくれた物の見方で対抗せざるを得ない。確かにこの映画はどこにでもあるような話をとりあげるのがテーマだし、子供のやることに一貫性や合理性を求めるのは筋違いかもしれないし、実話だということだから御都合主義に見えるところは現実の訳のわからなさなのかもしれない。しかし、だからといって、見るからにダメそうな悪ガキ達とあんなにあっけなく友達になられては、感情移入の機会を逸する。普通、こういうのは映画の後半に持っていかないと緊張感が維持できないでしょうが。あ、そうか、この映画は子供の成長を描くのが目的ではなくて、イヌへの愛情を描くのが真の目的だったんだな。しまった。わたしはイヌに特別の感情を抱くどころか、Q太郎並のイヌ恐怖症だったのだ!
主役の子供のまわりには、大人たちがいます。この大人たちがとてもあたたかくよい人たちに描かれていて、それが主役のアホさ加減をずいぶんと救ってくれています。パーフェクトストーム以来おばさん役者になったダイアンレインは非常に良かった。ノースリーブのサマードレスの脇からのぞく下着など、お母さんのディテール完ぺきです。惜しむらくは後半ほとんど出番がないことくらい。ケビンベーコン含む他の役者も大人の世界のいろいろな面を背後にしょった役柄で、そういう大人の世界を主役の子供がかいまみるというエピソードをうまくつくりあげています。なのに、この映画は、そういうエピソードがどのように子供に影響したかをまったく描いていません。まるで、この子は何も学ばずに大きくなったように見える。大人の素晴らしさと比べて、これも興ざめの原因です。黒人の問題なんて、結局掘り下げずじまいだし。
しかし、しかしだ。やっぱり動物と子役には勝てないのです。不覚にも、ラスト10分ほどは「いい話じゃん」なんて思ってしまった。おそるべし。
それにしてもこの映画は第二次大戦中の話なんだからなあ。まいっちゃうよ。
御裁断は(最高☆5つ)
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