パーフェクト・ストーム
ウォルフガングペーターゼンの作る映画はどこか重たい。いや、テーマがとか雰囲気がではなくて、お話の運びと演出がのっそりのっそり動いていると言う感じ。ネバーエンディングストーリー、シークレットサービス、エアフォースワン。ね。
今作もいきなりのオープニングから重かった(ジェームズホーナーの音楽もたまらなくおおげさで)。でも、最初に漁船が港に帰ってきたときの描写を見ているときは、「この作品には実話の重みがあるし、この監督の鈍重な演出とあいまって、壮大な叙事詩になるやもしれん」と期待していました。しかし、段々、そう、主人公達とは関係ないタンカーやヨットの危機が字幕入りで説明されはじめた頃から、「?」になってきました。こんなにたくさんの要素を展開させても、本筋と絡ませるのは大変だろうに?
結果だけ申しますと、絡まないのです。まったく。映画の後半のうち、半分くらいの時間は主人公の乗る漁船とはまったく縁もゆかりもない救出劇が展開されていって、そのまま映画は終わってしまいました。まあ、いいでしょう、グランドホテル形式のパニック映画ならそれもありかもしれん。確かに、この映画もパニック映画だと言えんこともない。しかし、それならそれで、アホなヨットのオーナーとか、使命感に燃えるレスキュー隊員の人間性を最初に描写しておかなきゃいかんでしょう。それをしないなら、後半の描写は漁船に集中させるべきだったんですよ。前半で人間ドラマをあれだけ丁寧に描いておいたのだから、漁船の乗組員達が、欲に目のくらんだ愚かな判断(後知恵だから言えるんですけど)をして大嵐の中に突っ込んでいったことも、必然の悲劇として理解できていただろうに。この映画は神話の出来損ないになってしまっている。
もっというと、流れがよくわからないところもあって。嵐から脱出することを決意して、その後船が一回転して乗組員が助かったあと喜ぶところは、あれは、船を波に対して平行にすると転覆しやすいんだけど、向きを変えるためにはやらなきゃいけないことだったということでいいんだと思うのだけど、その後でいっぺん天気が回復しているかのようなシーンがあって、その直後に再び大嵐になっているのはいったいどういうことだ?駆逐艦との死闘を乗り切ってやっと帰ってきた港で爆撃を受けて沈んでしまう「Uボート」のリフレインなのか?
それにしても、見なきゃよかったですよ、この映画。つらいことを思い出しちゃった。
御裁断は(最高☆5つ)
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