シュリ
結論から先に言いますと、この映画は必見です。黒澤の初期の映画をほうふつとさせるような
熱い
映画でした。この映画の登場人物のような必死の形相は、それだけでも観るものの情感を強く強く揺さぶります。特に、私たちのすぐ隣にいるような人たちが主人公とあらば、なおさらです。このような映画は、今の日本映画界にはもちろん存在していません。国の借金が予算規模の何倍にもなっていても平気で日々享楽に暮らしている我々日本人の必死なんてたかがしれています。そして、このような必死さはハリウッドを探したとしても、そうそう簡単に見つかるものではありません。冷戦が終わって、彼らは死者を出さずして戦争に勝てるようになったのですから。
この映画はきわめて緊張感に満ちたアクション映画であり、同時にとても悲しいラブストーリーです。この両方の要素は互いをもり立てて、そのことがこの映画を傑作にしています。この話の中でもあったように、大事なものを失う予感を感じるときは、いつも幸せのさなかです。その予感のために、今の幸せの大切さが浮き上がってきて、幸せの重要性が一段高いレベルに相変異します。しかし、世の中はどうしようもないくらい悲しい仕組みにでき上がっていて、予感はいつも現実になってしまう。もちろんそれが生きるということで、そういう仕組みを避けようとすると、それは死と同じことになってしまう。それは、多分この映画の中で描かれたたくさんの辛いことよりも、もっと悪いことなんだと思います。だから、この映画はとても悲しい話ですが、それだけではないのです。
最後、キッシンググラミーの片割れはどうなってしまうのでしょう?やっぱりずっと相手を思い続けて生きるのだろうな。
御裁断は(最高☆5つ)
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