U-571
第二次大戦版「レッドオクトーバーを追え」といったところでしょうか。Uボートの通商破壊活動に手を焼く米軍がナチスの暗号解読機エニグマを入手しようとして、大西洋を漂流中のUボートを極秘に奪おうとするお話です。連合軍がエニグマを秘密裏に入手し、ドイツの機密情報は筒抜けだったというのは歴史的事実ですが、ほんとうは奪ったのは英軍だそうです。第二次大戦の参加者はまだ生きている人もいるだろうに、こんな風に中途半端に歴史を改変したら怒る人もいるだろうなあ。僕のようにたかが映画と構えられない人はきっといますよ。
昔から潜水艦映画には傑作が多いのです。なぜかと言いますと、魚雷のおかげです。銃や大砲と違って、魚雷は非常にゆっくり進みます。そして船は小回りが利きませんから、魚雷がこっちに進行してくるのを発見して回避行動をとったとしても、すぐによけられるわけではありません。場合によっては、近づきつつある死をじーっと見ていなければならない場合もあるわけです。そうでないにしても、登場人物は魚雷の接近を息を殺して見つめなければならず、そこをじっくり丁寧に描くことが出来ます。おお、これぞサスペンス。登場人物も観客も、今、何が起こりつつあるかがわかっており、しかも何も手を打つことが出来ず、運命を待つのみ。まさに、サスペンスの元の意味そのままです。
潜水艦と駆逐艦の戦いもやはり潜水艦側からは何も出来ず、ただひたすら深く沈んで爆雷に耐えるのみ。ああ、サスペンス。で、この映画もこのあたりの潜水艦映画の常道的プロットをしっかりなぞっています。舷側をかすめる魚雷、爆雷を避けるための耐圧深度以上の潜行と配管の継ぎ目から吹っ飛ぶボルト、敵艦の腹の下をギリギリでかすめ通る作戦。これだけあれば、そりゃあ面白いですよ。奪ったUボートを操艦しようにも、ドイツ語が読めなくて困ったりとかも面白い。
ただ、もう少し工夫のいるところもありました。ラスト、そうするんやったら、敵のUボート沈めた時点でやっときいや、とか、後部魚雷発射管修理のところはヒロイックに描かないと後味悪いで、とか、急襲部隊はせめてドイツ語が喋れる人間にしておけ、とか、暴力描写が残酷に過ぎないか、とか、捕虜にしたドイツ兵のサボタージュ活動が本筋に全然絡まない、とか、そもそもマシューマコナヘイは優秀な軍人に見えない、とか(口を閉じなさい、口を)、ジョンボンジョビは何を思って俳優をやっているのか、とか。
御裁断は(最高☆5つ)
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