007 ワールド・イズ・ノット・イナフ
今作は、これまでの007とは少し違って、能天気アクションの裏に複層的にテーマが載せられているという構造になっていました。 あと私の見るところ、この映画のテーマはハンディキャップを負った男と完全無欠な男の間の三角関係です。なんといっても、この映画のクライマックスは制御棒を炉心に
挿入
しようとするハンディキャップ男を完全無欠男が阻止しようとするシーンですから。 ああ、なんていやらしい。
思えば、ロバートカーライルはとても悲しい役です。もちろん悪役なのですが、大事な女性と愛を交わすこともままならず、あげく007にその女性すら奪われてしまう。せめて、制御棒くらい思いを遂げさせてやりたいのですが、やはりそこは007。完全無欠男は最後には能天気に巨乳娘(しかし、デニスリチャーズは出てくる必然性ゼロだったな。この映画がボンド映画でなければ絶対にカットされていたはず)とお熱になってしまうといういつもの結末。
このほかにも、今作では過去のシリーズにない要素が盛り込まれています。Mがストーリーに大きくからんでくることだとか、ボンドとエレクトラの心理的駆け引きだとか、Q(しかしトゥモローネバーダイの評に「後はお前だけだぞ、Q」と書いたものですが、これが遺作になるとは。Qの冥福を祈ります)の後継Rに代表されるようなコミカルな要素だったり。アクションばかり派手で人間が描けていないというこの手の映画にありがちな批評を気にした対応なのでしょうか。しかし、それほど効果をあげていないのはご愛嬌。結局のところ、いちばん面白かったシーンはオープニングタイトル前のボートのアクションだったですからね。スキーのアクションシーンは007定番ですが、これは平均以下の出来でしたね。敵の倒し方が単調だった感ありですな。
それにしても、それにしてもですよ、僕はこの映画結構楽しんだんですよ。老けたとはいえソフィーマルソーだったし、ロバートカーライルは影の薄い役柄だったとはいえ熱演だったし、ピアーズブロスナンはスキーが苦手なようだったとはいえ007ははまり役だということを証明したし、デニスリチャーズは必然性があるとはいえびしょ濡れになっていたしで、面白かったじゃないですか。007だし。で、お決まりのベッドシーンの後、さあ、エンドタイトルだなあ、と思ったら、いきなりバタ臭さのかけらもないような歌が。ん?どうもこの歌は英語じゃないようだぞ。。。(数分経過)。。。あれ?どうも日本語に聞こえる????
で、最後、すべてのタイトルが終わってMGMのロゴが出ても最後の曲のことはクレジットされず、、と思ったら、LUNA SEAだぁ?まさか、まさか、この日本語の曲は配給会社が勝手に。。。。。。いったい何するんじゃああ!!!!!!!!
どこの配給会社か知らんが、これは冒涜です。C級映画でビデオ化する以外に収入がほとんど見込めんような映画を、営業の観点から日本向けにアレンジするというならまだ理解も出来ようものを、よりによって天下の007です。これは映画の作り手と007映画のファンの両方を愚弄するものです。本気で許しがたい。きっと本来なら何かのオーケストラの曲がかかっていたところでしょう。で、007のテーマとかが聞けたはずなのです。そのかわりに僕が得たものは角川映画を見た後のような雰囲気でした。何度も言いますが、こういうことをした配給会社は許しがたいです。
御裁断は(最高☆5つ)
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