ショコラ
昔々フランスに小さな田舎の村があったと思いなせえ。その村は教会と村長の伯爵さまを中心に神の教えに忠実に質素で欲望を抑えた生活を送っていて、村中で断食を行う(イスラム教か、お前らは!)期間まであるんだとさ。そこにやってきたのが、赤頭巾を来た母娘。あろうことか断食中の村でチョコレート屋を開き、その甘い魅力で頑なで色々な不自由な因習にとらわれていた村人の心を解放するお話。
そりゃあ、あんた、人間基本的な欲望を我慢するのは不自然ですわな。で、そういうのを「不自然ですよ」と語るというわけで、この20世紀欲望肯定文明のツケを払わなくちゃならないだろう新世紀に全く現代的意義を見いだせないお話なわけです。そんな陳腐な話を語ろうってえんだから、ちっとくらいは「芸」ってもんを見せてもらわねえと困りますわな。ただのおとぎ話仕立てじゃあ、芸とはいえませんぜ。どうも、ユーモラスな味付けも施しているつもりのようなんですが、ちっとも笑えません。ハリウッドに通って雑巾掛け百回からやり直して欲しいもんだ(後ろの席に座っていた白人三人娘は四六時中バカみたいに笑っていたから、ひょっとして英語をちゃんと聞けば笑えるのかと思ったりもしたが、最後のカンガルーでも大笑いしていたので、連中は単に映画と見ると条件反射的に笑う単細胞だったようだ。あのショットは娘の気持ちになってしみじみするなり小さな感動を覚えたりするところでしょうが。まったく、これだから毛唐って奴は)。
しかし、このお話、ひねくれた見方をすると、ひもじい思いをしている人々を糖分で籠絡して味方につけようってんだから、ほとんど買収ですわな。しかも主役のジュリエットビノシュは最初っから村長さんに対して、というか、古くさいタイプの人たちに対してケンカ腰。相手陣営の弱そうなところから順番にくさびを打ち込むんですから、非常に狡猾。あたしゃ、村長さんにおおいに同情しましたね。ん、ちょっと待てよ。どうも、断食のことが気になって仕方がなかったんだが、ひょっとして、この映画は西洋世界とイスラム世界の対立と西洋世界が取るべき政治的戦略について描いた映画なのかぁ?(そんなわけはない)
それにしても、ジュリエットビノシュがアップになるたびにソフトフォーカスになるのは、もちろん意図的なんでしょうが、気になってしょうがなかったですね。何の効果を狙ってるんだかさっぱりわかりません。一方絵作りは丁寧な仕事だったように思います。ジョニーデップのシーンはあんまり必要性を感じなかったんですが、ジュディデンチは圧巻でした。さすがはM。それから、娘はポネットだったか。大きくなったもんだ。
なんでもいいが、明治製菓もやることがスマートさにかける。チョコレートの映画とタイアップするだけならいい宣伝方法だが、本編上映直前にそのことをスクリーンででかでかと訴えることはあるまい。非常に興を削がれましたよ。企業イメージを落とすだけですぜ。どうも、日本の企業はこういう手法が下手だ。 誰か、教えてあげたほうがいいな。
御裁断は(最高☆5つ)
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