クローン
このタイトルはいかんよ、このタイトルは。うそじゃん。
ディック原作なので、例によってアイデンティティの不確実さの話。私が私であることを証明することは誰にも出来ないわけで、そもそもこんな問い掛けをすること自体が間違っているのであるが、それを言い出したらディックの存在自体を否定することになるので(でも、ということはディックが存在していること自体は認めることになるわけだから、それはよいことなのかもしれん。ああ、ややこしい)不問に付すことにする。いや、でも、知識に貴賎なしと言えども、この質問はやっぱしちゃいけないってのがあるよなあ。
で、今回自分を証明するために走り回るのはゲイリーシニーズ。この人、顔からして人間じゃないのだから、こういう人間だか人間でないのか判然としない役にはうってつけ。シュワちゃん主役のバカ映画(あれはあれで好きなのだが)とは一味も二味も趣が違う。役者は渋いところを取りそろえているのに、B級テイスト満載もよい。きっとこれはゲイリーシニーズの特性に違いない。あの顔がB級にさせるのだ。
しかし、SFというのは現実から遊離してなんぼのもの。キワモノ性がSFの肝とすればBテイストこそよいSF映画の必要条件なり。ということで、けっこう面白いお話だった。中盤をあと5分から10分カットすれば申し分ない。ただし、演出はダメダメ。音響はうるさいわ、カットが細かすぎて何が何だかわからないわなわけだが、「コレクター」の監督と聞けば納得も行くというもの。
それにしても人類が戦っているアルファケンタウリとはどのようなものなのか、その人類社会はどのようなものなのかについてくどくど説明せずに断片だけをチラチラ見せるだけというのは、ムードを高めてくれるものです。背景構築がしっかりしているように思えて、これもSF心を刺激する。
しかし、マデリーン・ストー。幸薄い役をやらせたら天下一品であることよ。
御裁断は(最高☆5つ)
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