シャドウ・オブ・ヴァンパイア
「吸血鬼映画に外れはない」がナカタの法則の第何項だったかはもう忘れてしまったが、今回もやはり法則は有効であった。とても奇妙な形ではあるが。
ファンタスティック系の映画を主たる鑑賞分野としているものとしては、吸血鬼ノスフェラトゥの名前は御馴染のもので、作品自体を見たことがなくても、写真などでその異様な風貌は見ているものである。そのノスフェラトゥが実在の吸血鬼だったとしたら、というワンアイデアストーリーの映画である。ノスフェラトゥと言っても、ウィレムディフォーはただのうらぶれたオヤジとして演じていて、血を吸うシーンといっても、怖いどころかまるで日雇いで稼いだ小銭で安酒を飲んでいるシーンのようだ。それでいて、映写機に映った昼間のシーンを一人見てもう忘れかけていた日の光を思い出すシーンがあったりもする。おかしみと哀しみである。
この映画のもう一つのテーマは、「映画を作る」ということである。そちらを担当するのはマルコヴィッチ演じるムルナウ。白衣を着てゴーグルをつけ撮影に臨み、「映画は科学の実験である」と宣う。映画のためなら、撮影スタッフが何人死んだってかまわないとし、撮影の終盤近くでは、あんなにたくさんいたスタッフはたったの三人(マルコビッチとカメラマンとウドキアー!)だけになっている。明確に描かれていないが、他は全部食べられてしまったのだろう(全般に演出に下手さが目立ったのは残念なところだ)。
それにしても、ニコラスケイジがプロデューサー。パチンコオヤジに身をやつして実はこんな目利きだったとは。あなどれん。
御裁断は(最高☆5つ)
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