アメリ
映画ファンというものは、世界に対して傍観者的に接するものである。もちょっと意地の悪い言い方をすれば、映画を観ることは基本的に覗き見で、覗きというのは自分を安全な場所において行う行為であるから、積極的に物事に取り組むという姿勢とは折り合いの悪いものである。そんなわけで、他人に対して自分の姿を隠して策略ばかり繰り返す夢見がちなアメリは私たちの写し絵といえる。
であるが、アメリの行う策略は、決して見ていて気持ちの良いものではない。たかが映画に真面目な突っ込みを入れて恐縮だが、彼女は自己満足の為に他人を利用しているに過ぎない。なので、結果として幸せな気持ちになる人がいる一方で、ひどい目に会わされる人もいるのだ。決して褒められた性格ではないぞ。アメリブームに乗っかっている女性陣に、そのへん注意を促しておく(偉そうだな>わし)。
しかし、と、ここでもう一回論旨をひっくり返すが、にもかかわらずこの映画はとても素晴らしいのだ。太陽の光の下のジャンピエールジュネがこんなに美しい映画を作るとは想像だにしなかった。主人公が主人公だけに、いろんな場所からものを見るのだが、そのショットは上下と遠近に空間を使ったものになる。こうして空間的に緻密に構成されたショットの数々を見ていると、単純に映画的喜びを得られるというわけだ。そのうち主人公の不快さも気にならなくなるから恐ろしい。あげく、ラストはアメリが自分のダメなところを少しだけ克服する形になっており、ちょっと感動させられたりする。惜しむらくは、お話と表現方法が一本調子に過ぎて、途中でだれてしまう事だ。いくつかエピソードを削って20分ほど時間を短くすれば良かろう(やっぱり今日は偉そうだな>わし)。あと、もう少し悪趣味な表現を抑えてくれていれば完ぺきだったのだが。
それにしても、ドミニク・ピノンって個性的だ。
御裁断は(最高☆5つ)
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