キューティー・ブロンド
この作品、能天気で何も考えていないおちゃらけコメディを装いつつ、人生のちょっとした真実をいくつか切り出していて、私の好むところのハリウッド娯楽映画である。
しかしまあ、娯楽映画としてのし上げ方は、なんとも不細工。オープニングは、デートのお誘いの手紙が、学生寮の中を通って学生社交界の女王であるところの、イケイケ女子学生に届けられるまでを軽快な主題歌に載せて描き、主人公がどんな世界に住んでいるかをたっぷりと紹介する。その間、主人公はもったいぶってなかなか紹介されないわけだ。お客さん、いや増す期待。これだけ焦らされるんだから、どんなゴージャスなブロンド美女が出てくるのかー!って、ところに出てくるのが長さ10cm(ウソ)にも及ぼうかというハリウッド1のアゴを持つリースウィザースプーンなんだから、お客さんズッコケ。つかみは完全に破綻している。
で、いろいろあって、カリフォルニアから東海岸にやって来て、よりにもよってハーバードの法学部に入って、周囲にバカにされながら、なんだかわからないけど殺人事件を解決して成功してしまうのだが、明確な敵役がいないから主人公の成功にはあまりカタルシスは無いし、殺人事件の解決部分もご都合主義を隠しもしないしで、なんだかなー。
とはいえ、これは良い映画なのである。明確な敵役がいないという事は悪人が全く出てこないという事で、そのせいで構成はヌルヌルになるんだけど、同時に明るい幸福感も味合わせてくれるわけだ。これまでと違う文化に馴染めない時でも、自分のスタイルを保って希望を持って明るく生きていきなさい、って気恥ずかしくなるほど前向きなメッセージなんだが、世の中には前向きなメッセージを必要としている人もいるからねえ。
ところで、リースウィザースプーンには、日本未公開の「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ」という大傑作コメディがあるんだが、もともとはシリアスな役からキャリアをはじめた人。それがコメディ映画で実績を上げてスターになるっていうと、なんとなくケビンクラインを思わせる。ってことは、そのうちライアンフィリップも感化されて、ジーンズの上からパンティつけようとして七転八倒するようになったりする日が来たりしたらいったいどうしよう。
御裁断は(最高☆5つ)
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