ロード・トゥ・パーディション
サム・メンデス先生は前作で父の復権話を描いたわけだが、今度も父についての話。しかも、3つの父子話が描かれる。で、前作の、少し斜に構えて、でも優しいタッチから、今作は真っ向勝負のストレート。風格あふれるタッチで、子に制約される父の話を描くのである。3つの父子話はどれも子のせいで親が破滅する話になっていて、父親ってのはああいうものなのかと勉強になるが、子供に取っちゃあ、それは幸せなことなんだろう。
しかし、主役父子の関係性の変化が、本来この映画で最も重要であるはずだと思うのだが、前半で父子のギクシャクさを丁寧に描いていないものだから、そのへんがいまいち伝わってこない。代わりにサブストーリーであるはずの二つの父子話(一つは本当の父子。もう一つは精神的な父子)のほうが、ずっと印象的になっているのである。まあ、別にいいんだが。そういう意味で言うと、この話はトム・ハンクスが子供でいることよりも父親でいることを望む話であることだ。鶏口となるも牛後となるなかれってことだな(本当か?)。あと、この泣かせんという意図ありありのラストは感心せん。お話上、テーマ上も不必要なはずだ(子供をピュアなままで置いておかせるという表現は他にもあるはず)。前作であれだけの才気を見せた人間がこんなありきたりなラストを作ってはいけない。
さて、トム・ハンクスが泣く子も黙る根っからのワルだっていう設定は、ベンアフレックがCIAの分析官役をやるくらいミスキャストだと思うのだが、一方でポール・ニューマンは、ハスラー2からまだ15年しかたっていないのに、驚くばかりによぼよぼになっていて、でも神様のような演技である。 すごいよ。ちょっと、死ぬ前に早くアカデミー助演男優賞やっとけよって感じだ。で、ジュード・ロウは河童猫背蟹股と(ぬえか、お前は)お嬢様方垂涎のところを見事に肩透かししているわけだが、単にお話を転がすための役にすぎないので、損な役回りである。しくったな。あと、ジェニファー・ジェイソン・リーはますますお化けみたいなんだが、最後の出番のショットは泣けたぞ。母親って言うのは、ああいうものなのか。私が母親になるわけではないが、勉強になる。
御裁断は(最高☆5つ)
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