サイン
ミステリーサークルといえば、UFOである。思えば私は子供の頃、学研の「空飛ぶ円盤の不思議」とかなんという本で、怪光線に焼かれたアメリカ人農夫の黒焦げ写真とか見せられて戦慄していたものだった。幽霊なんかよりずっと怖かったのだ。
今、つらつら思い返してみるに、なぜUFOものが怖かったかといえば、相手が何を考えてるんだかさっぱりわからないところだったのではなかろうか。グレイ型宇宙人とかご丁寧に瞳孔が無くって、表情が読めないようになっている。当然だが、彼らについての情報はほとんどないわけで、地球に来ている意図などわからない。コミュニケーションできない相手ほど怖いものは無いのだ。日本には空飛ぶ円盤が降りてこれるような誰もいない広い土地が少なくて、本当に良かったよ。
と、こういうのは、この映画とはあんまり関係ない話。シャマラン監督のこの作品は、例によって非常に緊密な構成で(一部には、そんな無茶苦茶な話があるかい、と思う人もいるようだが、それを言っちゃあおしまいよ)、しかも映画のテーマ自体がその語り口と一致しているという、私のような技法重視の人間をひれ伏させるに十分なものである。こういうテーマを扱う事によってどんなトンデモストーリーでもオッケーにしてしまうのである。シャマランおそるべし。言いたかないがヒッチコックに勝るとも劣らぬ。もう、ワンツースリーで私は完全にノックアウトされてしまった。
「シックス・センス」「アンブレイカブル」そして今作と、いずれもB級映画の枠組みを借りた家族の話である、というのは既に語り尽くされているのだが、今回は主役がブルース・ウィリスからメル・ギブソンに変わったという事で、趣が少し違う。メルギブは基本的には狂気の役者であるからして、映画全体のテンションがかなり高い。で、最終的にその狂気が癒されるわけだから「リーサル・ウェポン」一作目のリッグス再来である。シャマランもそれを意図してのキャスティングだとか。
いや、それにしても、ふっと窓の外を見て、グレイ型宇宙人がいたりした日にゃあ、もう。
御裁断は(最高☆5つ)
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