トータル・フィアーズ
これまで、ハリウッド娯楽作で原爆が爆発した事は何度かある。でも、それらは砂漠の地中だったり、海上だったりと、人命とは関係ないものだったが、それでも見ていて楽しくない気持ちになったものであった。それが、今度は何万人もの人が原爆で死ぬのである。こんなものを見せられては、ついつい「唯一の被爆国である日本で、こんな作品を夏休み第二段の期待の娯楽作として全国公開することには、断固抗議しなくっちゃ」という気持ちになる。私の住むここ長崎でもお盆中という事で結構大勢お客が入っていたけど、心穏やかでなかった人がたくさんいたに違いない。どうなのだ?アメリカ人は、この作品を911テロを連想することなく楽しく見ていられるのか?
映画の出来は、そこそこよい。というか、ジャックライアン物の中では一番良いと思われる。原作の複雑なストーリーをうまく刈り込みテンポよくまとめている。ベン・アフレックのジャック・ライアンは案の定ただのチンピラだったが、ジョン・クラーク、スピネーカー、ロシア大統領、モーガン・フリーマンなど印象的なキャラクターに事欠かない。
しかし、やはり今作での原爆の扱いは納得がいかない。このお話を展開させるのに、必ずしも爆発の必要はなかったではないか。ライアンの活躍ですんでのところで爆発が回避されたけれども、やっぱり米露が核戦争の寸前まで行く、というストーリーでもなんら不自然ではない。だいたい原作では件の原爆には欠陥があって、本来の爆発力を発揮できなかったという設定だったはず。なぜ、そこを省略する?ひょっとして、イラク戦に向けて原爆使用するための地慣らし、世論操作の為なのか?悲しい事だが、最近はそんな想像がしたくなる世情であることだ。
御裁断は(最高☆5つ)