ファム・ファタール
アメリカでは大変評判が悪かったそうだが、どうしてどうして、これはデ・パルマ印の大傑作ではないですか。スプリットスクリーン、スローモーション、カメラの覗き、曇りガラスの向こうで繰り広げられるエロシーン、偶然の出会い、全てがデ・パルマ的に完璧。ちょっとくらい自分とうり二つの女性と出会うと言うありえないような偶然があったっていいじゃないか。どうせ映画は作りもの。虚構性を華麗な映像で帳消しにしてくれるなら、それも一興だ。うっとり。
でも、それだけではない。私が今作で一番驚いたのは、お話を最終的にリリカルに落としたところ。こういう落とし方はデ・パルマの心の師であるところのヒッチコックは一度たりともしなかったわけで、いまだに彼をヒッチコックの亜流呼ばわりする向きはいったいどこをみているのやらだ。思えば「スネーク・アイズ」にしたって飄逸な雰囲気があったし、大愚作「ミッション・トゥ・マーズ」だって妙に感傷的だった。デ・パルマと言う監督は、登場人物のエモーションにはあまり頓着していないようだが、作品自体にはちゃんと感情的な要素が入っているのだ。決してテクニックだけの監督ではない。
これ以上書くとネタバレになりそうなので、このへんで。あ、最後に音楽について一言。あれなら、ボレロをそのまま使えばよかったような。。。
御裁断は(最高☆5つ)
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