ローマの休日
まだ13歳のときにテレビで見て以来だから二十何年かぶりに見るわけだ。子供の時に見て感動した映画を大人になって見返すのはいつも不安なものである。昔の感動を今得られなかったらどうしよう、と。それは決して自分が感受性を失った事を恐れるからではない。そうではなく、子供の頃の感動が、普遍性を持たない何か一時の気の迷いのようなものである事が白日の下になるかもしれないことを恐れているのだ。
しかし、幸いな事にほとんどの場合その不安は杞憂に終わる。今回も然り。やはり名作は名作。この映画のオードリー・ヘップバーンはまさに奇跡だ。
それにしても中学生のまだ批判精神の発達していない時期に、「たとえ損であっても、自分の気持ちを抑えてやるべきことをやる」ことをよしとして感動的に描く映画を観てしまったら、その後の人生の節目節目でついつい「自分にとって損な選択肢をわざわざ選ぶ」ような心理的バイアスを刷り込まれてしまうのも仕方のない事だ。
あまりに有名なこの作品の内容についてあれこれ言うのも野暮というものだが、一つだけ。この映画は登場人物は本当の事を言う事を禁じられているわけで、全てのセリフは間接的にしか心情を表せない。そのため様々なディテールを効果的に見せる事でキャラクターの感情を表現するわけだが、それこそが映画だ!
御裁断は(最高☆5つ)
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