マトリックス レボリューションズ
どこでこの作品(と前作)が失敗したのかを考えてみようと思う。まず第一に思い浮かぶのはスミスを復活させた事である。このことにより、一作目にあった機械と人間との対立軸がぼやけてしまった。二作目・三作目の究極の敵はスミスだったわけだが、そのスミスが敵である理由が、単に邪悪だからというのでは深みも何もあったもんじゃない。「人間性の回復」という普遍的なテーマを持った一作目の続編がウィルス駆除話になっちゃあしおしおだ。どうでもいいが、二作目三作目のテーマは「選択を自分で引き受けること」なんだと思う。しかしね、それはオタクにとっては重要な事かもしれんが、普通の社会生活を送っている大人には当たり前なんだぞ。
二つ目は、いらぬ能書きだろうか。前作であんなにもったいぶっていたメロビンジアンやパーセフォニーは今回申し訳程度の出演。何だったんだあの空虚なセリフの数々は。そして、そのようなセリフがアクションやドラマと絡んでこないのが致命的。一作目にちりばめた思わせぶりなセリフの数々がウケたのが災いしたようだ。風呂敷を拡げたまま、たたみきれなかったといったところか。それから「愛」とかグダグダ言うのって、一作目から後退しているじゃないか。
三番目はアニマトリックスのあざとい商売の尻拭い。私はある程度、話に聞いているからよいようなものの、ネオファンの少年の件なんて知らない人には全く不要だ。あざといといえば音楽もあざとくって聞いてられない。
四番目、これは作り手のせいではないのだが、オラクル役のグロリア・フォスターが三作目を撮る前に亡くなったのは痛かった。オラクルの重要性は三作目で一番高まるのだが、そこを代役にしなくてはならなかったのはつらい。残念ながらあの存在感は失われた。
そしてザイオン。数多く出てくる新キャラがことごとく印象が薄い。それから攻防戦の凡百のドンパチシーン。そのうえ電磁気爆弾でセンティネルを倒せるのなら最初っからやっておけばいいのだ。あれが使えないから困っていたのじゃないのか?そのあたりの練り込みが決定的に不足しているように感じる。
まだある。これはハッピーエンドじゃない。電池になっている人間のことは放置したままなのか?これがあの気高く人間性の回復を謳った作品の続編と言えるのか?
最後に、これは今作だけの問題なのだが、これは「マトリックス」だぞ。マトリックス世界があまり出てこないんじゃあ、何をやっているんだかわからない。だからといって、今作唯一のマトリックスのシーンである(ラスト、スミスと闘うところは現実離れしていてマトリックスの中と言わなくったってかまわない)ディスコでのアクションシーンを肯定するわけではない。これは一作目の繰り返しに過ぎないわけで、アリバイ的につけられたシーンのように見える。
とどのつまり続編は作られるべきではなかったと思う。ヒット作の続編は数あれど、マトリックスほど作られるべきではなかった続編もないんじゃなかろうか。期待の分だけ失望も大きい。
御裁断は(最高☆5つ)
2003年に見た映画へ
一覧へ