華氏911
入間のユナイテッドシネマで見たのだが、平日のレイトショーにも関わらずたくさん人が入っていた。しかも普段は映画館に足を運ばなそうな、50ー60代の人も多く見られた。
ブッシュに対して完全に坊主憎けりゃ袈裟まで憎い状態になっていて、あんな映像やこんな映像まで悪印象を形成するために使われてブッシュも大変だなあと思う一方、彼の地位と為してきた事を考えるとこれくらいの仕打ちを受けて当然だとも思う。
しかし、これは難しい問題なのだ。ある種のルール違反(今回はフロリダでの選挙結果への介入、911を利用した管理強化、言いがかりで始めたイラク戦争)を行う事で力を手にしたものと闘うために、ルール違反(メディアを使った印象操作)をすることは、許されるのだろうか。この手法は、物事を言われるまま鵜呑みにするのではなく、批判的に捉える事ができる人に対しては害が生じないのだけど、この映画が対象とすべき本当の相手は、そういうタイプの人ではない。プロパガンダに弱い人達がいる事から生じる問題に対処するのに、さらに強力なプロパガンダをもって行うのは大丈夫なのだろうか。もちろん、これは緊急避難なのであって、今や上品な手段を選んでいられない、手段の正当性に頭を巡らせる暇があったら、行動すべきだというのもよく理解できる。戦術的には全くその通りだが、試合に勝って勝負に負ける事もある。私にはまだ判断がつかない。
とはいえ、ブッシュは(それから、某国の「政治的に偏った映画は見ない」とのたまった首相も)とにかく政権から降りて欲しいという点にはもろ手を挙げて賛成だし、この映画は出来るだけ多くの人が見るべきだとも思う。 映画の出来と言う点で言えば、緻密に計算され尽くされていた「ボウリング・フォー・コロンバイン」と比べると、今作は突貫で作られた感が強い。主張に持っていくまでのシーンの積み重ねが雑な印象を受けるし、全般に単調に感じられる。今作のために撮影した映像の量も少ないと思う。「しかしこれもマイケル・ムーアの強い切迫感の現われなのだ」と解釈するのはやっぱり贔屓の引き倒しなのかしら。
どうでもいいが、ブッシュのイラク戦争終結演説のシーンに「アメリカン・ヒーローのテーマ」を使われるたあ、ウィリアム・カットも浮かばれまいて。って、まだ現役だよなあ。
御裁断は(最高☆5つ)
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