ニューオーリンズ・トライアル
この世の中に完全な社会システムなんてないわけで、どんなに緻密に作った制度や規則でも、必ずその裏をかこうとする人間は出てくるものだ。今回のグリシャムは、陪審員の評決を売ろうという話。グリシャム物を何本も見たり読んだりしていると、陪審員の個性によって裁判の帰結が大きく変わること、そのため原告側被告側双方が少しでも自分たちに有利な陪審員が選ばれるよう攻防を繰り広げているという事がわかる。今作では、その作業に関わる陪審コンサルタントの活動がメインに描かれていて、ひょえーっと思う。彼の国では、大きな裁判の陪審員候補になると趣味指向から政治信条まで、組織的に丸裸にされちゃうようなのだ。
こんなふうだと、本来の陪審員制度の意味なんてなくなってしまっていると思うのだが、どうか。彼の国の人はそういうところに疑問を持ったりしないのかしら?まあ、それはともかく、こういうことを防ごうと思ったら、システムを定期的に変更する必要があるんじゃなかろうか。システムが固定化すると裏をかく技術がどんどん向上していくわけだ。陪審員制度を10年くらいやめれば、陪審コンサルタントなんて潰れてその技能は失われるし、大学入試を全部やめれば予備校なんてひとたまりも無い。で、システムの裏をかこうとする人間がいなくなったところでまた元のシステムに戻せばいい。それに、新しいシステムに適応するまでの間は、いろいろ試行錯誤が出来てきっと楽しいぞ。
で、映画本体だけれど、私はひょんなことから見るつもりの無かった今作を見たわけだけど、そんな前知識の無い状態で見た私には大変面白かった。年がいも無くハラハラドキドキした。さすがはグリシャム物。お話の転がし方が上手だ。ただ、ジーン・ハックマンとダスティン・ホフマンの配役にはちょっと疑問だった。あまりにもステレオタイプで、サスペンスが発生する余地が無いんじゃないか?ひょっとしてそれが罠か?とも思っていたが、結局最後までパブリックイメージ通りの役柄を演じていただけだった。人によってはそれが嬉しいのかもしれないけど、私にはちょっと。ダスティンホフマンの方が精彩を欠いていた感じ。一方レイチェル・ワイズとジョン・キューザックは魅力的だった。
御裁断は(最高☆5つ)
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