下妻物語
フカキョン演じるところの桃子は、つまるところミスタースポックやミギーと等価の存在である。透徹した論理に裏打ちされた存在である一匹狼が、いろいろあって最後は感情や人間性を肯定する話。そのことにより、桃子やスポックやミギーは感情の要素を強く持つ人の自尊心をくすぐり、一方で論理一辺倒の人がそこはかとなく持つ欠落感を刺激して感情移入を図るのである。しかし、感情に裏打ちされた人間が理性を獲得する話が世の中にあまりないという非対称な状況なのはなぜだろう?
まあ、それはともかくとして、これは傑作である。オトナの観客はフカキョンのロリータファッションに二歩も三歩も引くかもしれないが、ここは踏ん張って是非とも見るべし。奇矯な見かけで包まれてはいても、これはオトナになる事のオーソドックスかつ普遍的な物語であり、生きる事の素晴らしさを描いている。こういうことは若いときよりもオトナになってからの方がよくわかるものじゃないか。
で、この作品はその力強い物語に加えて、目を引く映像をちりばめギャグを間断なく繰り出し、さらに時間軸を何ヶ所かいじってやることで観客に適度な緊張感をもたらす。これだけあればもう既に一級のエンタテイメントであるのに、その上に変な女演じさせれば負けるものない(というかいつもの)可愛いフカキョンに、ヤンキーの神が乗り移ったかという土屋アンナ。さらにさらに、あろうことか伏線をいっぱい張って最後にはちゃんと回収する事までやってのける、もう夢のような素晴らしい作品である。跳び蹴りもあるし。間違いなくこれまでの今年のNo.1。
最後に、見かけは大事だ。大事だから、周りに合わせる事なく堂々と自分の着たいものを着ていれば良いのだ。と、ロリータフカキョンに勇気づけられたのだった。
御裁断は(最高☆5つ)
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