シルミド / SILMIDO
金日成を暗殺するために作られた特殊部隊の悲劇を男臭いエモーションとこれでもかという音楽で仕立てた作品。実際にあった反乱を元にしているらしいが、死刑囚を集めて舞台を作った等の劇的な設定はやはり作劇ということらしい。
劇中で、はぐれ者の彼らは地獄の猛特訓をくぐり抜けることで戦士としての誇りと互いの友情をはぐくみ、それを力に無謀とも言える作戦に臨むのである。しかし作戦決行のまさにその日に政治の事情で中止命令を受け、さらに部隊の存在を知られてはならないとする上層部の命による抹殺から逃れるために反乱に追い込まれる。おお、これだけ読めば何たる悲劇。しかし、残念ながら主役であるところの人物の社会からの疎外ぶりがあまり描かれていないものであるから(韓国では連座制と言うだけで通じるのかもしれないが)、彼が「平壌に行かせてくれ」と嗚咽しても見ているこちらにはイマイチピンとこない。普通に考えれば、自殺行為の作戦に中止命令が下れば助かったと胸をなで下ろしそうなものである。最後もあんな風に終わらせるのは単なるお涙頂戴というもので、どうせ事実から大幅に脚色しているのであるからには、もう少し見せ場を作れそうなものである。どうも映画としてのできはあまり良くないような気がする。なんとなく昨今の韓国映画/ドラマブームも盛りを過ぎたんじゃないかと思わせられるのだが、どうか。
あと、この話は軍隊や政治の非人間性をこれでもかと言うくらいに描いているのだが、それを哀しみという感情で包むのは私の趣味に合わない。それは自己陶酔によって本質的な問題から目を背けさせる行為だと思う。
それにしても若き勝新とどこかの映画評にかいてあったが、まさにそのとおりで可笑しかった。
御裁断は(最高☆5つ)