リディック
「ピッチ・ブラック」の主要登場人物の一人リディックを主人公にしたスペースオペラ。なのだけど、日本での宣伝ではほとんどそのことに触れていない。確か最初の噂では「ピッチ・ブラック」の前日譚になるという事だったので、「そういう宣伝もありか」と思っていたのだけど、フタを開けてみたら今作が時間的に後になっていて、しかもリディック以外の「ピッチ・ブラック」の登場人物も重要な役で出ている。これじゃあ前作を見ていない人には何の事だかわからんよ。で案の定巷の評判は悪い。「ピッチ・ブラック」は面白かったけど所詮はB級で、そんなに見ている人も多くなかったろうから、それは当然だなあ。
いくつもの星を股にかけて、銀河征服をたくらむ悪の帝国と人類の興亡をかけてリディックが闘う話である。おおスペースオペラ。しかしリディックは一匹狼で、起死回生の秘密兵器を持っているというようなキャラでもないはず。どうやって一人で強大な宇宙艦隊を擁する敵と戦うのかと思ったら、宇宙大作戦(カーク船長のヤツね)方式だった。スケールが大きいんだか小さいんだかよくわからん。しかも一番手に汗握るシーンは監獄惑星から4-5人で脱出するサスペンスだと言う(でも、このシーンは超高熱の昼の側と極低温の夜の側という設定を使ったサスペンスで「ピッチ・ブラック」的に楽しめた)。
スケールがよくわからんと言えば、敵のネクロモンガー。なんかこけ威しいっぱいの宇宙戦艦、衣装、軍隊組織で、「SFは絵だ!」的にはバッチリなんだけど、いかんせんボスがあまり強そうじゃない。あげく一糸乱れぬファシズム的な存在かと思えば、内部対立を誘うかのような掟もあるし。強いのか弱いのかはっきりしろ!でも、それもラストシーンのヴィン・ディーゼルちゃんのぼう然とした顔を撮るためだというのであれば、それもよしかもしれない。あの顔は見物だった。それからジュディ・デンチも散々煽っておいて、最後のあのセリフはないでしょう。
「SFは絵だ!」と言えば、今作の美術は気合いが入っていて私は好きだ。こけ威しを見ているだけで単純に楽しい。一瞬未来惑星ザルドスか?と思ったりするが、それでもいいじゃないか。 それにしても、三部作の構想があるとか。原題は「リディック年代記」だし。しかし今回の評判からすると、よしんば二・三作目が作られたとしても、予算がほとんどもらえなくってショボショボになっちゃうことが案じられる。色々書いたけど、私は基本的にこの映画好きなので、この調子で後二作見たいんだがなあ。あ、でも格闘シーンのチカチカする演出はイヤだけど。
御裁断は(最高☆5つ)
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