ダニー・ザ・ドッグ
子供の時から、文字通り犬として扱われてきて、首輪を解いたときだけ狂犬になって飼い主の敵を倒して回る、人間らしい感情のかけらも持ち合わせていないリー・リンチェイが盲目のピアノ調律師と出会って普通の人間らしい心に目覚めていくと言う話。で、この作品は驚くべき事に、作品を成り立たせるはずの、いかにして普通の人間がどこの犬の骨ともしらぬアジア人を我が家に招き入れ家族同様の扱いをすることになったのか、という部分の描写を完全にすっ飛ばすのである。なんて豪胆な。リュック・ベッソンおそるべし。で、この省略を受け入れられる人ならば、この作品はけっこう面白い。
その面白さの理由はと言えば、人間性の回復を表現するリー・リンチェイの意外な好演もさることながら、「出てくるだけで映画の風格を一段階上げる男」モーガン・フリーマン(まさに逆ゲイリー・シニーズ)と忘れちゃいけないボブ・ホスキンスである。育ての親である彼のダニーに対する屈折した感情の表現は、リュックベッソンプロデュース、リー・リンチェイ主演のB級アクションの外見からはちょっと予想が付かなかった。
そんなわけで、モーガン・フリーマン一家がダニーを受け入れた後の、人間性回復過程を丁寧に描いているのが、この作品の最大のポイントだ。どうでもいいが、そこの娘がダニーの首輪を取るシーン、まるで2001年宇宙の旅で、「月を見るもの」がはじめてモノリスに触れたときと良く似た音楽がかかっていて、「ああそうか、これはそういう映画なんだなあ」と思ったのである。
御裁断は(最高☆5つ)
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