ミリオンダラー・ベイビー
クリント・イーストウッドはインテリである。インテリだから市長もするし、表現も素直ではなくて、映画を作るとボクシング映画の振りをした「良く生きる」事についての作品だったりする。で、この映画のテーマを語る最も重要な仕掛けであるデンジャーの話や、ヒラリー・スワンクの家族の話が、最初はさりげなく、いかにもサブプロットの様な顔をして提示されるところなど、そのインテリジェンスが見て取れる。
まあしかし、確かにこの映画は役者の演技も含めてとても質の高い物だと思うのだけれど、でも、私は表面的にしか心を動かされなかったのである。それはなぜかと考えているのだが、おそらくこの作品には、切実な何かが欠けているからのような気がする。話の重たさに見合った何かが。別の言い方をすると、後半の話の展開の必然性が私にはどうしても納得できないのだと言える。枯れてしまったジイサンが作るべき作品は、もっと俯瞰した視点を持ったものであるべきだと思うがどうか。
つらつら思い返すと、私はイーストウッドの監督作品を心から面白いと思ったことは一度もないのであった。インテリのひねくれは、私が映画に求めるものと相容れないのかもしれない。
御裁断は(最高☆5つ)
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