Mr. インクレディブル
スーパーヒーローが登場する映画を作るコツは、いかにして普通の人の視点を導入するかだと思っている(今作はスーパーヒーロー物と言うか007みたいであるが)。で、今作で感心したのは、その普通の人の視点を、スーパーヒーローたることを禁じられた主人公に重ねていることである。若く輝いていた時を思い出しながら退屈な日常を過ごしている主人公、、ってオトナの観客そのものやん!
というわけで、これまで子供向き映画の皮を被って大人向けのお話を作ってきたピクサーが、ついにその皮さえほとんど脱ぎ捨ててしまっているのである(もちろん子供でも楽しめるようになっているのが凄いところだが)。そしてテーマは家族(原題はThe incredibles、「インクレディブル家の人たち」だ)。もうこれはアニメの枠を越えてほとんど一般映画である。アニメである必然性と言えば、、そう、エラスティガールだ!
この作品は「Mr. インクレディブル」であるけれど、その内実は「Mrs. インクレディブル」なのである。主婦兼お母さんをしているときの色っぽさ、エドナにスーパーヒロインに戻ることをたき付けられて逡巡するときの心の揺れ、そして何と言ってもあの能力。手足が伸び縮みするスパイダーマン風のキャラだと思っていたのが、あんな事までできるなんて、もう脱帽。
ただ、シンドロームとの関係はもう少し深く描くことができたような気がする。平凡な人が非凡な人からあのように扱われることで抱く感情について、少し単純に切り捨てすぎているように思えて惜しい。
しかしながら、そんな欠点はどうでもいいと思えるほどこの映画は美しい。一カット一カットの芸術性が高いのだ。良くまとまったストーリー、美しい絵にウェルメイドな仕上げ。さらにエンドタイトルのかっこよさ。一ミリの隙も無い作品。ピクサーおそるべし。感心した。
御裁断は(最高☆5つ)
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