16ブロック
リチャード・ドナーはサスペンスやアクション映画を撮りながら、人の情の優しさ温かさを描いて見る物を前向きな気持ちにさせる事が多いので、私の好きな監督の一人だ。今作は、そんなリチャード・ドナーの資質が良く出た小品で、人生に絶望したアル中刑事のブルース・ウィリスが、悪徳警官告発の証人であるモス・デフをそれと知らずに16ブロック離れた裁判所まで護送しようとするのだが、途中で襲われて云々かんぬんという話である。実時間と映画の中の時間がほぼ同じで空間的にも狭い範囲を舞台としており、登場人物も少なくまことにコンパクト。で、ブルース・ウィリスは「え?この人こんなに老けてたっけ?」と思わせる容貌で登場し、全編通して苦虫を噛みつぶした顔に足を引きずってお話を転がしていくのだけど、それが最後の最後のワンカットでいつもの笑顔を出してきて、見る側にしてみるとずっと押さえられていた気持ちがパッと解放されてカタルシスを得られると言う。四捨五入すると80歳になるリチャード・ドナー、いぶし銀の魅力である。
何回かあるミスリードがいつも同じパターンなのはご愛嬌。あと、ある程度年の行った映画ファンなら「ガントレット」をちょっと思い出したりするかもしれない。
御裁断は(最高☆5つ)
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