サウンド・オブ・サンダー
ピーター・ハイアムスがシド・ミードのデザインした未来世界を舞台にブラッドベリの原作で映画を作ったと聞けば、10台の頃ツルモトルーム版「スターログ」を貪るように読んでいた私に見に行くなといっても無理な相談である。
タイムマシンで大金持ちを過去に連れていって恐竜狩りをさせていたら、何か気が付かないうちに過去に介入してしまっていて、その影響が現代の世界を変貌させてしまう。現代に戻った主人公たちはそのことに気付き、世界を元に戻すために原因を突き止めようとする、という話。なんか面白そうでしょ。割と面白いんですよ。ただし、話の焦点はタイムパラドックスにまつわるロジックにあるのではなくて、進化の道筋が狂ったために現われた異形の生物(アフター・マンかはたまたフューチャー・イズ・ワイルドかと言った趣)が跋扈する世界を如何にして通り抜けるかというもの。つまり、SFというより怪獣アドベンチャーに近い。でも、これは決して悪い方に作用したわけじゃなくって、ピーター・ハイアムスの資質にあっていたのですね。つまりこの作品は良きB級ってこと。
B級と言えば主役のエドワード・バーンズであって、これが仰々しい未来の銃に迷彩服+宇宙服のようなヘルメットをまとって現われるのはもう好事家にはたまらない。最後近くのヒロインの変身のとぼけた味わいも、これぞB級テイスト。
でも、製作費だけはたいそうかかっているようで、聞くところによると経費節約のためにプラハで撮影していたら(最近よく聞く策ですな)、2002年に起こったエルベ川の氾濫によるプラハ大洪水でセットが大被害を被ってしまったかららしい。で、一時は完成も危ぶまれていたものをなんとかかんとか纏めあげたとか。特撮も色んな国のラボに依頼したせいでレベルがまちまちで、シーンによっては背景から登場人物が完全に浮き上がってるところとかあった。最初見た時は、あまりのウソクササにバーチャルリアリティーのシーンという設定かと思ったよ。
まあ、それはともかくとして、この作品の工夫は、過去を変えた影響が即座に現在に及ぶのではなくて、タイムラグを持って現われるということ(劇中では時の波として表現される)。これのおかげで、現在に戻った主人公たちが、小さな異変から徐々に事態の異常さがエスカレートしていくと言う、お話上の盛り上がりを作る事ができたわけである。タイムトラベルものの設定としては邪道な気もしないではないが、映画作品としてはこれもアリかと思う。
御裁断は(最高☆5つ)
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