ブロークバック・マウンテン
どんなに大切なものだと思っていても、従たる立場の男性であったとしても、子育てはそんなにたやすい仕事ではない。時間的な拘束もさる事ながら、こちらに全面的に依存してくる存在が与える精神的重圧は大変大きく、私だって時に自分の事だけ考えていればよかった無責任な独身時代を思い返してみたりすることがある。この映画は、そんな家庭を持った「大人」からの逃避を、少し変わった形で描いた映画なのではなかろうか。だから、この映画は娘の結婚、つまり親の立場で言うとある種の解放で終わるのだろう。この作品を男同士の愛情関係を描いたものとしてのみ捉えてしまうと、この映画の持つ普遍性(と言ってもこんな事を感じるのは男性だけなのかもしれないが)を置き忘れてしまう事になりそうな気がする。
もう少し意地悪な見方をすると、この作品にホモセクシュアルの衣装を纏わせるのは、単にアン・リーの商売っ気の現われなのかもしれない。映画を見た後では、こんなに良い作品になってるんだから、奇をてらう事しなくても良いのになと思うのだけど、確かにそれが無かったとしてアカデミー賞にノミネートされたかと言うと、難しかったかもしれない。ひょっとしたら「ハルク」の失敗を取り戻そうと思っていたのかも。
ジェイク・ギレンホールのキャラクターは遠路はるばる会いに来てつれなくされた時の逆ギレとか、大変に女性的。一方のヒース・レジャーのキャラには、ホモセクシュアルに走る必然性が全く感じられなかった。でも、それもこの映画の本質を上のようなものだとすれば、おかしなものではないと思える。
御裁断は(最高☆5つ)
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