これまでのピクサー映画の良いところは、これがアニメじゃなかったとしてもきっと引きつけられただろう魅力的なストーリーにあったと思う。社会の圧力で能力の発揮を禁じられたスーパーヒーローや子供を脅かすのが仕事の会社に勤めるモンスターなんて設定なんて聞いた事がないし、親子が離れ離れになったら探し回るのは普通は子でしょう。
なのに、今作は何を血迷ったかストーリーは凡庸そのもの。自信過剰で自己中心的な若者がひょんなことから出会った田舎の人たちとの交流の中で優しい心を取り戻すなんて話、古来何回語られてきた事か。さらにこのようなストーリーは、アニメで語られる必然性はまったく無い。にも関わらず今作は、全ての登場人物のみならず、ハエやウシまでも車に置き換えるという仕掛けを施してくるわけだが、これがどうも地に足のついておらず落ち着かない。ひょっとしたら、全てを車に置き換える事が今作の最大のメッセージなのかも知れないけど、これもアメリカほどの車社会ではない日本に住んでいると今一つピンと来ない。
というわけで、オープニングの素晴らしいレースシーンとこれまで以上に作り込まれた風景と空気感を除けば、後は言葉は悪いがやっつけ仕事を見せられたような気持ちになった。確か、これはピクサーがディズニーに買収されなければ、ディズニーとの契約の最後の作品になっていたはず。ひょっとして、そう言うの影響してたりするのか?
一方、前座の「One man band」は完璧。これまでの前座の中で一番ではないか?うっかりiTunes Music Storeでビデオ買いそうになった。