グッドナイト&グッドラック
最近は世の右傾化傾向に正面から異を唱える作品が目立っているが、今作は赤狩りの行き過ぎをテレビで批判したエド・マーロウの物語。映画を見ている時は知らなかったが、マッカーシーが出てくる場面は全てストックフィルムで、つまり本人の映像であるらしい。使用映像のチョイスが的確だからなのか、それとも映像は真実を映すからなのか、マッカーシーの姿には小心さと、その同根であるところの変質的なまでの攻撃性が現われていた。
白黒のショット一つ一つがカッコよく(特にエド・マーロウの放送シーンのアップは痺れる)、テレビ局の別番組内で行われていると思しき歌の録音のシーンを使った挿入曲の入れ方もスタイリッシュで、ジョージ・クルーニーが監督としてはこんなセンスを持っている人だとは思っていなかった。ただ、ロバート・ダウニー・Jr.がお話の中で上手く役割を果たしていないように思えた。彼の背景やどういう立場なのか(最初はてっきりスタッフの中の弱い輪で、彼を焦点にしてサスペンスが生じるのだと思っていた)が説明不足なんじゃなかろうか。
あと、まるでテレビ放送が赤狩りを止めさせる決定的な一撃になったかのように映画では描かれているが、実際はそんなに劇的なものではなく、いろいろな反赤狩りの動きがあったのだそうだ。
まあしかし、今の世の中に引きつけて考えるに、権力の間違った振る舞いに対して、適切な時と場所が整った場合に、この映画の登場人物のようにキチンと行動を起こせるかどうかということは、常に頭の中に置いておかなくちゃいけないような気がした。
御裁断は(最高☆5つ)
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