嫌われ松子の一生
TOHOシネマズでこれでもかとばかりにかかる予告編に辟易していたのだが、あの傑作「下妻物語」の監督の最新作だと言われると見ないわけにはいかない。
中谷美紀演じるところの松子さんの悲惨な人生の部分は、けばけばしくポップなミュージカル調で作られていて、予告編から想像される通り。で、もしこの映画が松子さんだけを焦点にして作られていたとしたら、突飛で悪趣味スレスレのセンスに溢れた「下妻」の亜流に留まっていたろう。しかしやはりこの監督は優れた作家なのであって、松子さんの人生を、その顔も知らない甥に再解釈させるという形で表現する。これによって、この映画のお話の悲惨さとポップなミュージカルという形式とのズレが、単なる突飛さの追求のためではなく、表現すべきテーマから要請される必然となるのである。優れた作品だと思う。
まあしかし、「下妻」の方が素直に感動できたというのがホンネだ。ドラマの中で成長するキャラクターが暴れ回れた「下妻」と比べると、動きのあるキャラである松子さんと成長するキャラである甥が分離されている今作の構造上のハンディキャップは大きいわな。あと、仕方がない事とはいえ、松子さんが天国への階段を上る時に人生のフラッシュバックが長く映された後に、カーテンコールで見どころ部分をもう一度見せられるのはちょっとくどかったかな。
御裁断は(最高☆5つ)
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