ポセイドン
最近気が付いた事があって、私は「Uボート」以降のウォルフガング・ペーターゼンの作品で日本で公開されたものは「プラスティック ・ナイトメア/仮面の情事」を除いて全て見ているのであるな。毎回毎回見る度に演出に文句言っている癖にまったく学習効果がない。というか、こちらの見たくなるようなツボを心得ていて、それだけでもって金を稼げる監督になっているのは流石と言うべきなのかもしれない
で、今回のツボは、あの名作「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイクと来た。70年代に映画を見ていたものなら、そう聞かされて食指の動かぬものなどいないに違いない。太ったオバサンの気高い心やジーンハックマンの神への怒りに心を動かされなかったものがいるだろうか。
しかし、できてきたものはやはりペーターゼン印なのであった。脚本自体はまともなものであって、生き残ろうとする者の中には、自殺志望者がいたり、生き残るために蹴落とされて死んだ人の知人が後から脱出行一同に合流したり、と面白いドラマが展開する余地がいくらでもあるキャラクター配置をしている。なのに、そのようなドラマは一ミリも描かれない。描かれるのはただ延々と続く叫び声と金属に囲まれた狭い空間、そして流れてくる死体なのであるな。また、上映時間が一時間半しかないものだから、脱出行を描くのでアップアップで、例えば途中どこかで休憩地点を取って、そこでドラマを描くと言うような事もしない。普通私は上映時間が短い事を評価するのだけど、今回は違うよ。それに脱出の途中でやむなく死ぬ人が出るのは仕方がないけど、それにはそれなりの伏線の引き方ってものがあって、今回みたいに何の悪い事もしていないのに蹴落とされて死ぬとか、悪人だけど突然現われて、まさに死ぬためだけに出てくるキャラクターとかはやっちゃいけないと思う。あと「モーニング・アフター」が、今風の下品な歌に置き換わっていたのもがっかりだ。
それにしても、最近は古い映画のリメイクが大流行だけど、今回みたいにオリジナルを見ている人がまだ多数いる名作をリメイクするのは、名作の続編を作るより悪評に繋がる可能性大なのだから、やめたほうがいいんじゃないですかね。
御裁断は(最高☆5つ)