ブラック・ダリア
思えば警察官と言うのは大変な商売である。情報屋に銃撃されるかと思えば、猟奇殺人の捜査でおぞましい世界を覗き込まされ、人間関係もずたずたにされる。まともな感性の持ち主ならやってられないだろうけれども、ジョシュ・ハートネットのような感情の乏しそうなタイプならなんとかなるのかもしれない。
冗談はともかく、この映画は最初の幸福なシーンと、その後の陰鬱なシーンとの落差が肝なはずなのだけど、それだったら主役は陽性な場面にもう少しマッチした役者の方が良かったような気がする。デ・パルマの資質とも相性が悪い気がするし。
他にも、話の展開が御都合的に見えるところが何ケ所かあるし、事件の真相が登場人物がべらべら喋る事で明らかになるのもちょっとはしたない感じがする。でも、中盤の上下方向と影を効果的に使った目眩く殺人シーンはさすがはデ・パルマである。もう、こういうシーンだけで全編を構成してくれれば、ストーリーとか登場人物の心理なんてどうでも良いのだが。あ、でもそれだと「ファム・ファタール」になってしまうのかもしれない。ますますどうでも良いのだが、デ・パルマは傑作と駄作を交互に打ってくる傾向がある。
御裁断は(最高☆5つ)
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