ダーウィンの悪夢
この作品はビクトリア湖に放たれたナイルパーチが現出させた破滅的状況を描くドキュメンタリーとのこと。ということで、てっきり「ダーウィンの箱船」にタイトルが由来しているのだと見る前は思っていた。しかし、今はどうやらそうじゃなさそうな気がしている。そうでなくて、これは社会ダーウィニズムがもたらした弱肉強食思想がもたらした災厄を描く作品だから「ダーウィンの悪夢」なのではないかと。拾って来た缶で炊き上げた米を奪い合って手づかみで食べるストリートチルドレンの姿こそがこの映画の本質である。そういえば、ポスターで一番大きく写っているのもそこだ。
いや、私のような仕事をしていると、ビクトリア湖の環境破壊を描くと言えば、内容はシクリッドの事で100%占められるのが当然であると決めてかかるわけだけど、実際この作品で湖の中の事が語られる部分はほとんど無くて、代わりにあるのは貧困と戦争である。その意味で、別にナイルパーチなんて出さなくたってちっとも困らない。というか、ナイルパーチはダシに使われているに過ぎないのであって、私の立場的には少し肩透かしを食った気分。湖岸を大量の虫が発生して飛び回って雲の中にいるかのような映像があるのに、そのことには触れもしないし。あわよくば授業のネタに、と思っていたのだけど、ちょっと難しいか。
オープニング、管制官が部屋の中を飛び回るハチを退治しようと苛々しているシーンのカット割りがあまりに作為的で、ちょっとこれはドキュメンタリー的にどうなのかなあ?と思っていたら、最後までその調子だった。いや、決してドキュメンタリーは真実をありのままに映すべきだと思っているわけではないのだけれど、でもこれって作者の独善的な主張を展開する作品か?と思われないような努力は必要だと思うのよね。
御裁断は(最高☆5つ)
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