ディスタービア
教師を殴ったせいで、家から半径30メートル以上離れると警察が飛んでくると言う監視システムをつけられて自宅軟禁になった若者がヒマヒマに隣家を覗いていると殺人鬼がいた、という話。「裏窓」の一つのバリエーションと言える。しかしながら、サスペンスの教科書とも言える「裏窓」との根本的な違いは、家から出られないという制約は、ピンチに陥ったときには簡単に警察を呼ぶ事のできる武器になる事である。だとしたら、この興味深いシチュエーションを生かすためには、「この線を踏み越えれば警察を呼べるのだけど、でも自分が間違っていて隣人が殺人鬼じゃなかったらどうしよう?」という葛藤をどこまで引き伸ばせるかということが肝になるはずだ。しかし、隣人はデヴィッド・モースなのである。なんてタイプキャスティング!これじゃあサスペンスも生まれません。
というわけで、この作品が専ら掘り返すのはサスペンス方面ではなくて、別の隣人であるセクシー女子高生との惚れた腫れたなのである。いや、まあ女子高生役のサラ・ローマーは大変魅力的なのでそれはそれで楽しいのだけど。そういう面から言うと、彼女がクライマックスにほとんど関わらないと言うのが、この作品の最大の欠点に思えたりする。そこは、キャリー=アン・モスがやるところじゃないだろう!って言う。
その関連で言うと、この作品の底流としては、自分のせいで交通事故で死なせてしまった父親の暗い影というのがあるはずで、少なくとも脚本レベルでははっきりとその事が現れているのだけれど、作品に仕上がるところでその面がぽっかり忘れ去られてしまったようである。おかげでカラッとした雰囲気になって良かったのだけど、だったら脚本も刈り込めばよかったのにね。
御裁断は(最高☆5つ)
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