パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド
ヒット作の続編を二部三部とまとめて作ると言う事をやりだしたのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」あたりからだろうか。撮影は効率良く進むだろうけれども、二部はともかく三部になると、作り手の力がつきてくるのか大味な作品になりがちだなあといつも思っている。
で、今作だが、そういう三部目であることを差し引いても、ちょっと目を覆いたくなる出来。まず、キャラクターがたくさん出過ぎて収拾がつかなくなっていて、しかもそれぞれがなんのために行動しているかが一貫しないので、見ていてただポカンとするばかり。一貫した目的を持つキャラクターがいないという事は、主役がいないという事である。それは客の立場からは、誰の立場にも自分の身を置く事が出来ないということで、娯楽映画としては致命的である。あれ?後から考えてみたらバルボッサだけはおかしな行動をとらなかったけれど、ひょっとして主役は彼か?
それからあれだけもったいぶって話を引っ張ってきたカリプソなる存在が、やっと現れたと思ったら、ただの黒いジャイアント・ウーマンで、しかもすぐに退場して後はお話上に全く関係してこないと言うのは一体どういう事だろう?いや、確かに嵐を呼んでいる事になっているのだけど、クライマックスの戦闘シーンを嵐の中でやりたいのなら、素直に嵐が来た設定にすればいいのであって、カリプソなんてものを持ち出さなくて一向に構わないではないか。あの生気のない大女を一瞬現れさせるためだけに世界中の海賊を一所に集めたのですか?なんてもったいない。
第二部の終わりで死んでしまったジャックであるが、本来これは幾多の困難と闘って彼を救出すべきところなのに、単に石のカニがいる変な場所にジャックを連れに行ってきました、って言うだけの何とも締まりのないシークエンスになっている。それから二部であれだけ大暴れしてくれたタコの化け物も、あっさり殺されていて本当にガッカリだ。どうやったらこんなに期待を肩透かしする脚本を書けるんだろうか?
しかも、今作ではコミカルなシーンの比重がとても少なくなっていた。ああ、一作目のあのまとまりぶりはどこへ行ってしまったのか。
御裁断は(最高☆5つ)