ロッキー・ザ・ファイナル
70年代に映画を観はじめたものとしての私はやはり、ロッキーのテーマに特別な感興を引き起こされる(といっても、まだ10歳にもなっていない第一作公開時には私はギラーミン版のキングコングを見るのがやっとであって、はじめて観たのは実はテレビであるのだけれど)。やる気が出てくるのであるな。ベタですまぬ。しかし、これは刷り込みなのだ。生卵飲まなきゃいけない気持ちになるのだ。片手腕立て伏せしなきゃならない気持ちになるのだよ。
この「最後の」ロッキーは、おそらく最も一作目に近い雰囲気を持っている。スタローンの服装しかり、ダメになりかけている人間が一念発起してがんばるストーリーしかり、エイドリアンを排除した事から可能になったロマンス方面しかり、である。その意味で本作は大変クラシカルで、でも今だからこそその実直なクラシックぶりは好もしく見えて、つまりロッキーシリーズの一作とバカにしてはいけないと言う。いや、実際良い映画だと思う。さらにこれが一作目の単なる焼き直しでない点はどこかというと、試合が終わったあとのシーンにあって、ロッキーは最後のラウンドまで戦ったら判定も聞かずにさっさとリングを降りて帰っていくのである。穏やかで満足げな笑みを浮かべて。もう、ここにあるのは勝ち負けとかどうでも良い達観。好きなようにやる事が出来た喜びだけであって、これは老成なくしては表せない情感のように見えた。つまり今作は還暦を迎えたスタローンだからこそ作るべきもので、そういう意味でも見る価値があると言う。
いや、私も人生の半ばにさしかかって、体・気力の衰えをシャレでなく感じるようになってきているわけで、そういう人達でもこの映画の「それでも闘うんだ!」というテーマは、なんというか、こう、熱くさせられるわけですよ。ベタですまぬ。
どうでもいいが、本編の前にランボー4の制作告知があって、原題がJohn Ramboだった。で、このロッキーの原題がRocky Balboa。フルネーム表記がスタローンの秘かなブームなのか?
御裁断は(最高☆5つ)
07年に見た映画へ
一覧へ