それでもボクはやってない
端的に言って、日本人は忙しすぎる。忙しすぎるがゆえに、一つ一つの仕事がおざなりになって、そこに非人間性が入り込む余地が生まれる、と言う事の問題点について語った作品。そんな社会派な作品なのだけど、一方で娯楽性もあって、それが奇をてらったキャラクターの登場と言ったようなあざとい手法ではなく、司法の不条理な世界に突如放り込まれた普通の人の戸惑いを、絶妙な間で描き出す事でおかしみを出すという手法で実現されている。大変に品の良い事だと思う。割と必見。ただ、後半少しだれた感じがないでもない。あと20分短ければ。。
それはともかく、最初に日本人は忙しすぎると書いたけれども、その忙しさが何ら幸福の生産に結びついていないところが、この社会の不条理のように感じることがある。喩えて言えば、みんなが賽の河原で石を積み上げるのに忙しい社会のような。その根底には、この社会における競争が手数をどれだけかけたかで決まる部分が多い事にあるような気がする。だから、必要より遥かに多い手数が全ての仕事の遂行について回ると言う。その結果が、満員電車であり、一年もかかる裁判だったりするんじゃなかろうか。この映画で描かれる問題の多くが、必要最低限の手数で仕事をするように努める事で解消するんじゃないかと思う。
もたいまさこがとてもよかった。登場するだけで何もしていないのに、泣けて笑えて大変。役所広司も抑えた存在感があった。特に初登場のシーンは、なぜか感動に打ち震えてしまった(それまでずっと主人公にとって不条理な展開で気が滅入っていたのだけど、役所広司の登場から希望が出てくる、その端緒だったからかもしれない)。居酒屋で作戦会議するシーンとか、うっかり法律屋さんの事を好きになってしまいそうだった。竹中直人は、、流してましたね。
御裁断は(最高☆5つ)
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