スパイダーマン3
クモ学者の端くれとしての私もこの映画を見始めてはや三作目。もう設定も何もかも周知のことであって、クモ学者として見るべきところはほとんどなくなっているのであるが、一介の映画ファンとしてはまだまだ面白く見られるのである。
サムライミは、人のダメなところを愛を持って描くのに長けた監督で、例えば今作では初めて砂男と戦った後にコスチュームに入り込んだ砂を捨てるシーンや、プロポーズに失敗してシャンパンに沈んだままの指輪を、フォークを使って取り出すところを丁寧に描くところなんかに、この人の個性が良く現れているように思う。あと、何かあるとすぐ悪乗りするのもサムライミの癖であって、ブルース・キャンベルのシーンとか、悪の宇宙生物にのっとられて街を風切って歩くところとか、大笑いした。
しかし、敵がどんどん現れてきて、スパイダーマン側にも味方が現れて、ってアメコミの王道であるのはわかるんだけど、そういうシリーズの展開をされると映画としてのパワーが落ちるのは否めないところ。今作だって、いったい本筋はピーター・パーカーの葛藤なのか、それとも砂男の娘への愛なのか、取り返すべき友情なのか、さっぱりわからない。この三つのテーマは脚本的にも全然無関係で、一応ラストで一ヶ所に会するけれども、それぞれがバラバラのままで終わってしまうので、見ているほうとしてはちょっと煮え切らない。特に砂男のパートは、結局そういう落ちじゃあマッチポンプと言われても仕方がないよね。
まあでも、アクションシーンが高速で色々飛び回り続けるにもかかわらず、何が起こっているのか、だいたいはわかるというのはと言うのはさすがだ。
御裁断は(最高☆5つ)
07年に見た映画へ
一覧へ