スターダスト
ハリーポッターと指輪以来、ファンタジーと言うとダークでリアルでないといけないような空気がいつの間にか定着しているのだけど、本作はそういうのとはちょっと毛色の違う、お伽話としてのファンタジーという。で、これが決して時代遅れだとかは感じさせない。
お伽話だから残酷なところはもちろんあるのだけど、その残酷さが血肉を伴わない抽象的・記号的なものであって、その混じり気の無さが残酷の中にあるイヤな部分を昇華させていて、結果とても口当たりがよくユーモアさえかもしだすのである。こういう処理はクラシカルであるのだけど、でも今の世の中新鮮であるという逆説。
ユーモラスで肩の力の抜けた作品だと言うのが、この映画の最良の点だと思う。お話や世界観が特に目新しいわけではなく、主人公がキラキラとした魅力を放っているというわけでもなく、CGや特殊効果も特段すごいわけではないけれど、見ていて楽しくなってくるのだ。主人公が結局のところ、自分の手では誰一人の命も奪っていないところもポイントだ。良いよね上品だ。
俳優陣の事も語らねばならない。まずはミシェル・ファイファーである。生きたドロンジョの称号を贈りたい。いや、良い意味で。思い通りにならなくってウキーってなるときのおかしさったらない。若返った時のキラキラウッフンもよい。こういう自分の立ち位置をキッチリ把握して役に望む俳優は素晴らしいのである。で、デ・ニーロである。途中までは「アナライズ・ミー」の二番煎じかと思っていたら、ちゃんと伏線が引いてあって、衝撃のオチでドヒャー。ガツン、じゃないよ、ドヒャー。その後の部下達の対応も良い。こういうところを見ると、この映画が単なる子供向けの甘い映画じゃないことがわかる。
それよりなによりクレア・デインズである。最初今作の予告編を見た時、ファンタジー映画のヒロインがクレア・デインズだあ?ってことはお姫さまかなんかか?え?流れ星?流れ星って何?とパニクったものだ。いや、百歩譲って流れ星の役があるというのは受け入れよう。しかしクレア・デインズはもう30近い。しかも顔は最近とみにゴツゴツしてきている。キラキラお星さま役はいくら何でもミスキャストだろう?と思っていたのだが、そこがどっこいそのノーブルな顔立ちと演技力で違和感をねじ伏せてしまっているのだな(いや、単に私がクレア・デインズ大ファンなので目が曇っているだけなのかも知れないけど)。もうかわいいお星さまにしか見えない。ホントに光るし。最後も決まってクレアファンとしてはもう最高。
というわけで私的には大好きな作品なのだけど、世間的にはほとんど話題になっていないのが残念至極だ。まあ、クレア・デインズとミシェル・ファイファーじゃあ訴求力としては物足りないし、デ・ニーロは出番が多いわけじゃないし、ファンタジーと言っても怪物の一つも出てこないし、流れ星がって言ったら子供向けだと思われるし、売り方が難しいのはわかる。わかるんだけど、これは人に知ってさえもらえれば評判をとれる作品だと思うのだけどねえ。もったいないなあ。
御裁断は(最高☆5つ)
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