AVP2 エイリアンズVS.プレデター
一般に、三つ以上の勢力が戦いを繰り広げる話の醍醐味は、裏切りないしは同盟の形成から生ずる形勢の逆転にあるのだと思う。で、その同盟が有り得なさそうであればあるほど、形成されたときのカタルシスが強まるわけだ。前作はそのあたりをちゃんと心得ていたのであるが、今作はどうだ。エイリアンはただ人を食っていくだけ(どうでもいいが、一般に動物は身の危険があるときは餌を採る事を控えるものであるが、今作のエイリアンはプレデターが近くにいても全く気にせずに捕食活動を続けている。これが映画史上最強の生物であるところのエイリアンのする事か、とひどく残念であった)。プレデターは人間の事なんか目もくれずただエイリアンを狩っていくだけ。そして人間はただ逃げ惑うだけ。こんな風にお話のよって立つべき所に無頓着じゃあ、良い作品にはなりません。
そもそも、30年以上にわたって作られ続けているこのシリーズで、今作ではついに人間社会の只中にエイリアンが侵入してくるわけだ。人間側には一体どんな打つ手があるのか?というのが当然興味の中心になろう。それがこれじゃあただのB級怪物パニック映画である。いや、あんなあっさりした対応で処理できるのじゃあ、ただのゾンビじゃないか。映画史上最強の生物であるところのエイリアンも地に墮ちたものである。
百歩譲って今作がB級怪物パニック物だとしても、であれば逃げ惑う人物のキャラクターから生まれるドラマを描かなきゃダメじゃないか。お母さんに複雑な気持ちを持っている女の子の描写とか、主人公の少年とガールフレンドの間の恋心とか、ちっとも生かされてない。
というわけで、こんなもんでよかんべイズムに満ちあふれた今作なのでした。ラストショットも「これでお客は大喜び。うしうし」という安易さが透けて見えてよろしくなかった。
御裁断は(最高☆5つ)