僕らのミライヘ逆回転
私の学生の頃は、まだビデオカメラが高価だった時代。動画を残したい向きが使うものはまだまだ8mmフィルムが主流だった。で、私もご他聞に漏れずカラカラとカメラを回していたわけだ。高校三年から大学の三年まで毎年一本ずつ20-40分の作品を撮っていて、最後の作品は、思い起こせば恥ずかしさ満点なのだが、タイムトラベル物だった。未来の人の衣装とか厚手のビニールのポンチョを頭からカブって腰で縛っただけだったり、京阪七条の白く長い地下道を未来世界に見立てて人の通らない早朝にゲリラ撮影したり、乾電池で動く卓上ランプを塗装しては中を刳り貫いてケーブルとか埋め込んだのをタイムマシンにしたり、わら半紙に描いた絵をコマ撮りして時空の歪みにしてみたり、どうですこの恥ずかしさ満点具合。
でも、こうやって工夫して映画を撮っていた頃ってのはとても楽しかった。物を作る楽しさは、結果的な出来の良さの中にあるのではないのだから、実は誰にでも開かれてるものなのだな。
この作品は、そういう話。ひょんなことから勤めているレンタルビデオ屋のビデオの内容を全部消してしまったモス・デフとジャック・ブラックが苦し紛れにバッタ物のリメイクを作ったら、これが大評判。次々とバッタ物を作っているうちに、著作権屋が乗り込んできて作ったビデオをすべて壊されてしまう。そこに降ってくるビデオ屋閉店の危機。彼らは今度はオリジナルの作品を作って、、と言う話。実は、撮影の工夫で困難を乗り越えるってところはあまり描かれていないのだけど、そこは実体験で補いながら見ていると、途中から泣けてきて止らなくなる。ビデオ屋に飾ってあるポスターが「タイムトラベラー きのうから来た恋人」なのも、ツボ。
また映画を作りたくなった。
御裁断は(最高☆5つ)
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