ベオウルフ/呪われた勇者
結論から言うと、今作は反英雄映画である。主役であるところのベオウルフは、知性のかけらも見られず、すぐに自分の名前を喚き、ウソつきで、欲望に負け、下品な部下を持ち、戦いとなると服を全て脱ぎ捨てる「英雄」として描かれている。さらに、ベオウルフだけではなくて、前半に出てくるフロースガール王も類似の人物だ。これは明らかに、英雄という存在をバカにする事をテーマとして作られたものである。で、さっぱりわからないのは、何故そのような事をしなくてはならなかったのか?と言う事である。このテーマをヒロイックアクションの形式で語るのは、どう見ても娯楽映画として成立する筋ではないように思われる。私自身は、最初の方の水泳競争のシーンで「そうか!これは全部がギャグなんだ!」と見極める事ができたので、それなりに楽しめたのだが、ここをつかみ損ねるとかなり辛い観賞体験になったのではなかろうか。ロバート・ゼメキス、どうしてしまったのだろう?
以前から、CGをリアル方向に使って人間を描くと気持ち悪くなるだけなので、止めた方がよいと思っている。でも、今作の予告編を見たときには「またCG人間か。でも、このくらいCGと実写がシームレスに繋がるのなら、まあいいか」と思ったのだな。それがまさか全編CGだったとは。。。私の目ももう信頼ならんな。ともかく、モーションキャプチャーができるところは、手間さえかければほとんど本物と見分けがつかないほどになってしまっているのである。一方、水泳競争のシーンなどで如実だが、人間によるお手本が無ければやはりCG人間はただのお人形なのである。つまり、生身は未だ必要なのであって、それなら実写にしとけよ、という。
それにしても、CGとはいえアンソニーホプキンスの尻は見たくなかった。
御裁断は(最高☆5つ)
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