クローバーフィールド/HAKAISHA
回収されたビデオという設定のフェイクドキュメンタリーといえば「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」がすぐに思い浮かぶわけだけれども、あの作品はまあ一発アイデアに全面的に依存した素人作品だったわけだ。今作は、それをプロがやったらどうなるか?と言う事で、結果としてハリウッドの力を見せつけた作品になった。
その最も重要な仕掛けが、重ね撮りされたビデオと言う設定で(SDカードに記録していて、あんな風に過去の映像が表示されるのか?というツッコミは無しで)、事件の少し前に撮られた日常の幸福な風景が時々挿入される。これはドキュメンタリーと言う形式を逸脱する事なく、フラッシュバックを使って主人公のエモーションを表現すると言う、実に巧妙な仕掛けなのである。オチにいたるまで、この仕掛けの効果は完璧だったと思う。そして、もう一つ注目すべき点が、前半延々と描かれる日本に旅立つ主人公のサヨナラパーティーのシーン。これがまた形式をキチンと守った上での、滑らかなるキャラクター紹介になっていて、かつ本筋と全く関係ないにも関わらずとてもスリリングで、観ていてドキドキした。最初はイヤイヤカメラをやっていたキャラクターが次第に記録する事の面白さに目覚めていくところなんて、大げさに言えば感動的ですらある。しかも、それが事件が起ってからの「そんなの撮ってないでとっとと逃げろよ!」というお客の批判的視線を封じ込めてもいるのだから、今作の周到な計算のされ方にはつくづく感心する。で、私は隅々まで計算されている映画を高く評価するものである。
エンドクレジットの音楽は見事にオリジナルのエッセンスを模倣していて、これも良いのである。それから酔う酔うと言われているが、私はあんまり酔わなかった。単に劇場の一番後ろの席に座ったからかもしれないけれど。
御裁断は(最高☆5つ)
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